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岡野宏文

職業・肩書き
タレント・その他
ふりがな
おかの・ひろふみ

プロフィール

最終更新 : 2018-06-08

クリティカル・エンターテイナー

「岡野宏文」のおすすめ記事・レビュー

  • レビュー・書評

なにがなんだか分かんないことの豪壮な面白さを伝える不条理小説

なにがなんだか分かんないことの豪壮な面白さを伝える不条理小説

銀行に勤めるヨーゼフ・Kはある朝目覚めると、侵入してきた男二人にいきなり逮捕される。だが逮捕状もなければ、罪名も分からない。身柄は拘束されず自由にしていていいのだが、裁判所に出頭してさえなにもはっきりせず、依頼した弁護士の活動が進んでいるのか、はては裁判が進んでいるのかどうかさえまるっきり雲をつかむようなありさまだ。Kは理不尽さへの怒りや悲しみよりも、どんどん不安になってゆく。 なにがなんだかまるで分からないカフカの傑作不条理小説。

まあ、なにが書いてあるのか考え方で少し分からないでもないのであり。たとえば私たちはある日気がつくといきなり自分が生まれている。生まれたことの理由もなければ意味も示されない。学校なんかへ出かけていろいろ学んでも生まれたわけははっきりしないし、だったらよりよく生きようとさまざまな活動をしてみても住んでる世界はいっこうにすっきりしてこない。という諸条件と、「審判」のシチュエーションはきわめて似てはしまいか。

といったからって、「審判」はわたしたちの人生の不可解さをたとえ話で書いてみせているのではないだろう。そのことをわずかに…

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「新感覚派」と呼ばれた鬼才の鋭い言葉のアクロバットを堪能されたし

「新感覚派」と呼ばれた鬼才の鋭い言葉のアクロバットを堪能されたし

横光利一はいわゆる「新感覚派」と呼ばれる作家の一翼です。 「新感覚派」というのは、感覚が「新」なのですな。この意味は、新しく感じるんじゃなくて、新しい形で感じるんですな。感じ方が新しいと、感じる中身も新しくなるのです。でそれはもちろん、文章の新しさという現れで小説の中にやってきます。

本書には、10編の短編が収められていますけれど、たとえば「廂(ひさし)を脱(はず)れた日の光は、彼の腰から、円い荷物のような猫背の上へ乗りかかって来た」(蠅)とか、「ナポレオン・ボナパルトの腹は、チュイレリーの観台の上で、折からの虹と対戦するように張り合っていた」(ナポレオンと田虫)とか、「海浜の松が凩に鳴り始めた。庭の片隅で一叢の小さなダリヤが縮んでいった」(春は馬車に乗って)とかいった具合で、奇妙ともいえるユニークな表現が作品を支えているのです。それを読むだけでも充分に面白い。もちろんその表現が与えてくれる独特の世界の手ざわりを感じるならこれにましたことはありませんでしょう。

本書の中でことさらへんてこりんで、その分読み応えがあるのは「機械」という短編です。まず改行…

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型破りなオーバーアクションに涙なくして読めないのだ、笑いすぎて、ああ菊池寛

型破りなオーバーアクションに涙なくして読めないのだ、笑いすぎて、ああ菊池寛

菊池寛の一般的な作家イメージはヒューマニズムに基づいた大感動ストーリーの人ではないかしら。しかし、漢字を多用したちょっと古めの言葉遣いのスクエアな感じにたぶらかされてはいけません。あの「真珠夫人」の底抜けの、「anything gose」な顔を忘れちゃいけません。この方はある時期から、「さらばリアリズム」の巨匠なんであります。

本書には短編が10編入っています。どれもたいそう面白いですね。面白い本来の意味で面白い。おもしろ可笑しい。超絶短編「形」なんかは、たった3ページのショートショートでございますが、わたくし中学のみぎり、国語の教科書で読んで「いいのか、こんなものを載せて」とビックラこきましたです。

侍大将中村新兵衛は音に聞こえた名将で、槍をとったら無双です。いざ合戦となったら真っ赤な羽織にキンキラキンの兜をつけて、その姿を見ただけで敵の雑兵は恐れをなして逃げ惑い、敵陣をなぎ払って進む姿は水際立ち、軍勢の中でもひときわ目立つその姿は計り知れぬ敵の脅威、見方にとってのはてしない力だったんです。さてあるとき初陣の若侍が、それ格好いいから僕にちょっと貸…

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新鮮な官能が倦怠した文化を刷新する「想像力のテロリスト」

新鮮な官能が倦怠した文化を刷新する「想像力のテロリスト」

「桜の木下には死体が埋まっている」といったのは、坂口安吾だとよく間違われるけれど、梶井基次郎ですね。安吾は「桜の森の満開の下」で、満開の桜はご陽気なようにみんな勘違いしているけれど、満開の桜の花の下から人間を取り去ってみると、気の違うような恐ろしい風景になります、といってるんですね。

で、梶井基次郎。胸の加減が悪くて夭折され、体力もあまりなかったので短編が多い方です。ただしその短編というのが、「桜の下の死体」発言でも分かるとおり、異様に細くとがった、見方によればやや病んだ、繊細で敏感な神経で書き付けたようなあやうい小説ばかりなのであります。

これをもうちょっというと、なにが書いてあるのか、分かる人にしか分からない小説。ナイーブな精神性みたいなものを共有しなければ、真核を見失うごとき小説、なのではないでしょうか。ちょっと憧れる。

代表作が本書に収められています。全11編。

さながら代名詞ともいえる「檸檬」(れもん と読みます)は、なにか不吉な塊が胸のところにわだかまっていたたまれなくなった「私」は、京都の町をさまよい、田舎くさい八百屋で檸檬を一個あがなう…

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ありえないキャラクターのありえなさを楽しむ破格ミステリー

ありえないキャラクターのありえなさを楽しむ破格ミステリー

秦健日子による雪平夏見シリーズの3冊目。「アンフェア」シリーズといってもいいだろう。 河原で発見された男の死体には、赤いリボンで括られた殺人請負業の広告チラシが口に押し込まれていた。その被害者の名は佐藤和夫。雪平刑事の元夫にして愛娘の父にあたる人だった。

「フクロウ」と名乗る殺人請負人は、やがて毛ほどの証拠も残さないまま警察をあざ笑うかのように第二、第三の犯行を侵し、マスメディアの白熱の中、雪平は不眠不休の捜査をむなしく続ける。ふとした糸口から隘路を見いだした雪平は、あまりにも大胆な罠を犯人に向かって仕掛けることにするのだった。

このシリーズの魅力は、ヒロインである雪平刑事のユニークなキャラクターによるところが大きい。生活習慣はきわめてだらしなく、自宅マンションの床はゴミですっかり埋まっている。料理なんかもちろん作れない。そうしたことから離婚され愛する9歳の娘・美央と別れて暮らさねばならない苦悩に耐え、苦しみを紛らすかのごとく仕事に熱心で、かつ能力もあり捜査一課で三年連続検挙率ナンバーワンを誇る一方、法規通りとはいえ過去に未成年を2名射殺した経歴を持…

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蛇が母になって部屋にやってくる、不穏な気配に満ちた謎物語

蛇が母になって部屋にやってくる、不穏な気配に満ちた謎物語

「蛇を踏む」は、たいそう面白い小説なのである。ただし、「笑っていいとも」かなんか見ながら「明星一平ちゃん」をすすったそのまんまの気分でダラダラ読み始めたりすると、なにがなんだかさっぱり分っからねえ事態に陥るので要注意ではあるのだ。

なにを準備すればいいかというと、日常的な言葉の論理というかね、たとえば大人は子供より年取ってるとか、海は魚より大きいとか、石とか砂利は食べられないとか、そういうふつうに暮らすときに必要な知恵、常識、正しい生理感覚、これまず全部捨てましょ。全部捨てて、世の中を学習していなかった子供のころ身につけていた印のついてない妄想、原始的な皮膚感覚、これをむきだしにしてページを開かねばならぬわけ。そうするとあら不思議、ものごっつい世界がそこには展開するのであった。 お話は「私」がうっかり蛇を踏んじゃうところからはじまる。なにやらとめどなく柔らかかったその蛇は、人の姿に化けて歩いていってしまう。バイト先の珠数屋から部屋に戻ると、その蛇が50がらみの女性になって食事を作り、あなたのお母さんですよなどといいながら「私」を待っている。蛇の世…

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完璧に見える推理を次から次へと反証するぜいたくきわまりない読み心地

完璧に見える推理を次から次へと反証するぜいたくきわまりない読み心地

アンソニー・バークリーの「毒入りチョコレート事件」は、推理小説です。そう書かなくとも、まさかこれを恋愛小説だと思う人はいないとは思いますが。このタイトルでめくるめくラブストーリーを書いた人がいたら、自分の恋愛観について反省した方がいいでしょう。

推理小説には、とても怜悧で、巧緻で、舌を巻くようなアイデアの盛り込まれた傑作がいくつも存在します。でもバークリーの作品は、そういうハードルをすべてクリアした上で、さらにどこかしゃれた味わいが漂うのです。それはたぶん、登場する人物のキャラクターが馥郁と描かれているからではないでしょうか。なんかこう、あつみのない紙の上の人たちなのに、背中の丸みをもっているようなというか。 さて中身です。 チョコレートの試作品を食べたベンディックス夫妻の、婦人は死亡し、ベンディックス氏はなんとか命を取り留めました。毒が入っていたのです。でも問題のチョコレートは、知人のペンファーザー卿へ送られたもので、ベンディックス氏はもらい受けただけでした。警察の捜査は難航し、迷宮入り寸前となります。ところで、ここにロジャー・シェリンガムという…

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この笑いをオバンやオジンに独占させておくのはもったいない

この笑いをオバンやオジンに独占させておくのはもったいない

いまお笑い芸人ていうと、ボケとツッコミに分かれた二人組が主流で、似たようなボケに似たようなツッコミを延々とテレビではくり返して飽きもしないけれど、僕ら少年時代はいわゆるピン芸、ひとりでしゃべりを繰り出す「漫談」とか「物まね」とか話芸じゃないけど「奇術師」とかいった個性の強い芸人さんがたくさんいました。ついでにいっとけば、三人でトリオを組んでコントをやるグループも一杯いて、伊東四朗さんのいた「てんぷくトリオ」、ミステリー評論家でもある内藤陳さんのいた「ナンセンストリオ」、上岡竜太郎さんのいた「マンガトリオ」などなどは独自のギャグをたくさんもっていて、客席を荒れ狂う海のごとく湧かせていたものだけれどそれはちょっと別な話。

このピン芸というのは、話術の緩急をお客の息をはかりながら自分ひとりで加減しなくちゃならないので漫才よりも過酷というか、孤独な芸であります。一度テンポを外したら、相手のツッコミの切れに頼るってことができない。

綾小路きみまろが登場してきたときに、これはご高齢の方を相手にした宴会の前説芸だなと思ったのです。体の調子の悪い箇所や政府の保険制度…

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百年の誤読 海外文学編

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ストレッチ・発声篇 (高校生のための実践演劇講座)

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1997-07-01
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