なにがなんだか分かんないことの豪壮な面白さを伝える不条理小説
銀行に勤めるヨーゼフ・Kはある朝目覚めると、侵入してきた男二人にいきなり逮捕される。だが逮捕状もなければ、罪名も分からない。身柄は拘束されず自由にしていていいのだが、裁判所に出頭してさえなにもはっきりせず、依頼した弁護士の活動が進んでいるのか、はては裁判が進んでいるのかどうかさえまるっきり雲をつかむようなありさまだ。Kは理不尽さへの怒りや悲しみよりも、どんどん不安になってゆく。 なにがなんだかまるで分からないカフカの傑作不条理小説。
まあ、なにが書いてあるのか考え方で少し分からないでもないのであり。たとえば私たちはある日気がつくといきなり自分が生まれている。生まれたことの理由もなければ意味も示されない。学校なんかへ出かけていろいろ学んでも生まれたわけははっきりしないし、だったらよりよく生きようとさまざまな活動をしてみても住んでる世界はいっこうにすっきりしてこない。という諸条件と、「審判」のシチュエーションはきわめて似てはしまいか。
といったからって、「審判」はわたしたちの人生の不可解さをたとえ話で書いてみせているのではないだろう。そのことをわずかに…