日本語にしか表現しえない「せつなさ」のたゆたう物語――最新刊『星ちりばめたる旗』小手鞠るいインタビュ-

『星ちりばめたる旗』(ポプラ社)
――本作は、幹三郎と佳乃が語る過去と、2人の孫であるジュンコが語る現在が交錯しながら進んでいきます。ジュンコは、どのように生まれたんですか。
小手鞠るい(以下、小手鞠) 過去と未来を繋ぎ、物語を大きく引っ張っていく人物として、幹三郎と佳乃と同じくらい初期から思いついてはいましたね。けれど、当時の資料をひもときながら造形していった2人とちがって、日系三世にあたるジュンコは、生まれも育ちも現代に生きるアメリカ人。離婚してシングルマザーとして働く姿も含め、私の周囲にも多いタイプなので、わりと書きやすかったです。
――娘たちには完璧なアメリカ人であることを望んだ母の望みに反し、日本人になりたいと切望していたジュンコは、自分だけが母に愛されていないという葛藤を抱えます。2人の確執も、物語を読み進めるためのひとつの鍵ですね。
小手鞠 私自身が、母親からの無償の愛というものにやや懐疑的なところがあるんですよね。もちろん母というのは素晴らしい存在だと思いますが、すべての母がすべての子どもに無条件で愛を抱くのならば、虐待なんて起こるはず…