「わたしはもっと不幸になりたかったのです」――太宰治『人間失格』を下敷きに小手鞠るいが描く、絶望を貪り尽くす女の物語
「女性であることに対する、言い知れない不安と恐怖」を抱えていた葉湖(ようこ)は、幼少時、両親を嫌悪しつつも生きるために嫌われることを恐れた。目立たない存在でありたいと、あえて醜い容姿で世間を欺きながらも、自意識、プライド、自己顕示欲に苛まれた高校時代。ある出会いからの性欲の開花。大学に進学し、家を出た葉湖はアルバイト先のスナックで好きでもない男たちと性的な共犯関係を結ぶ。その後、本当に好きになった男からプロポーズを受けるのだが――。
恋愛小説、児童文学の作家として知られる小手鞠るいさんの最新作『女性失格』。太宰治のロングセラー『人間失格』のパスティーシュ(※)として書かれた本作だが、2022年のいま『女性失格』というタイトルを目の当たりにすると、著者の他の意図も想像できる。アメリカ在住の小手鞠さんにメールインタビューで『女性失格』について訊いた。
(取材・文=konami 撮影=内海裕之) (※)他の作家の作品から借用されたイメージやモティーフ等を使って作られた作品。作風の模倣。 小説の技法のひとつ。
何もかも【そっくりなのに、まったく違う】とい…