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逆ソクラテス

逆ソクラテス

逆ソクラテス

作家
伊坂幸太郎
出版社
集英社
発売日
2020-04-24
ISBN
9784087717044
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「逆ソクラテス」のおすすめレビュー

伊坂幸太郎が『逆ソクラテス』で描く、子供たちが大人に抗う短編5作――世間の決めつけをひっくりかえせ! 

『逆ソクラテス』(伊坂幸太郎/集英社)

 デビュー20年を迎えた伊坂幸太郎の『逆ソクラテス』(集英社)は、5つの短編からなり、いずれも小学生が主人公だ。小学生たちは大人の支配下にある無力な存在だが、この関係が逆転される痛快さこそが、本書の精髄だ。

 劈頭を飾る表題作を例に出そう。久留米という教師が登場し、彼の振る舞いが子供たちに問題視される。久留米は勉強でも運動でも、「この生徒はできる、この生徒はできない」という先入観を持って子供たちに接する。子供のひとりが久留米のやることなすことは、テレビで見た「教師期待効果」にあたるという。「教師期待効果」を要約すると「この子はできる」と期待して指導すればその通りになる、という(その逆も然り)意味らしい。

 勉強も運動もできない草壁という生徒は久留米から期待されない地味な存在。だが、それを逆手にとって、クラスメイトが様々な作戦を決行する。クラスで一目置かれる優等生も加担して、草壁の秀でたところをトリックにより見せつけ、久留米に一泡吹かしてやろうと意気込むのだ。この作戦が成功するかどうかは本書を手にとってみてほしいの…

2020/6/5

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 18回目となる今回のノミネート作品10作の中から大賞に選ばれたのは、町田そのこ氏の『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)!

2021年本屋大賞受賞作 『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)

『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ/中央公論新社)

翻訳小説部門の大賞は『ザリガニの鳴くところ』(ディーリア・オーエンズ:著、友廣純:訳/早川書房)

気になる残り9つのノミネート作品は?

2位『お探し物は図書室まで』(青山美智子/ポプラ社)

3位『犬がいた季節』(伊吹有喜/双葉社)

4位『逆ソクラテス』(伊坂幸太郎/集英社)

5位『自転しながら公転する』(山本文緒/新潮社)

6位『八月の銀の雪』(伊与原新/新潮社)

7位『滅びの前のシャングリラ』(凪良ゆう/中央公論新社)

8位『オルタネート』(加藤シゲアキ/新潮社)

9位『推し、燃ゆ』(宇佐見りん/河出書房新社)

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2021/4/14

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犬のコーシローが12年間見つめた地方の進学校に通う18歳の青春――『犬がいた季節』伊吹有喜 『犬がいた季節』(伊吹有喜/双葉社)

『犬がいた季節』は三重県の進学校を舞台に、18歳・高校3年生の生徒たちの物語を描く連作短編集。作中で流れる12年間は、生徒たちによって学校で飼われていた白いふかふかの毛の犬・コーシローが生きた時間。地方の進学校も、コーシローも、著者・伊吹有喜さんの母校と、そこに実在した犬がモデルなのだそうだ。伊吹さんはこの物語にどんな思いを込めたのだろうか。

 昭和、平成、令和…。時代を経て移り変わるそれぞれの物語は、その時代の音楽、流行、時事ニュースなどを背景に語られていく。地方都市ならではのリアリティも、随所に盛り込まれる。

「18歳で選択をした後にも人生にチャンスはあるし、そのときにはもっと選択肢が広が…

2021/2/16

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逆ソクラテス / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

表題作を含めて5つの短篇を収録。共通項は「少年時代」。いずれも小学生(5,6年生)の男の子たちを主人公に描かれる。物語の語り手も、その仲間たちのうちの一人だ。女の子も登場しなくはないが、あくまでも添えもの的な存在。伊坂幸太郎の世代には小学生は基本的に男の世界なのである。参考文献にもあるが「思い込み」の打破がサブテーマである。それに拘泥しすぎて、「非オプティマス」のようにいささか説経臭くなってしまったものもあるが、概ねは郷愁を誘われ、なんだか切ないような想いを誘われる。かつて男の子だった人たちに送るエール。

2021/10/28

starbro

新型コロナウィルス対策購入シリーズ第24弾、伊坂 幸太郎は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。小学生が主人公の連作短編集、オススメは、『スロウではない』です。それにしても、ドン・コルレオーネがこんなに活躍するとは(笑) https://www.youtube.com/watch?v=RNfIq2vvM4k https://www.shueisha.co.jp/gyakusocrates/

2020/05/01

とも

今まで読んできた伊坂さんの作品の中で、とても好きだ。 何度も鳥肌がたって「う〜〜っ」と声がでた。 磯憲のような先生がたくさんいい影響を与えてくれると、世の中が少しづつ良くなっていくのかな。 子供達にも読んでもらいたい。 また読み返そう。

2021/01/21

bunmei

小学校生活でよくみられる、アルアルの場面を切り取った短編集。クラスで目立たない子供を主人公に、その子供とは究極の立場にある先生や友達の言動に対する本音のつぶやきが、子供らしい視点で描かれています。教師の何気ない一言や同級生からのいじめを子供視線で鋭く描き、学校現場への警鐘を鳴らしています。そこにユーモアを交えて、子供らしい稚拙なオチで締めくくることで、その深刻さが前面に現れれず、サクサク読める効果をもたらしています。磯憲先生の、ギャンブルとチャレンジの違いを語った言葉は、良い言葉として印象に残りました。

2020/05/08

鉄之助

伊坂幸太郎に外れなし! スポーツにかかわる小学生を主人公にした、良くできた短編集だった。深い教育論が根っこにはあるが、説教臭くなく知らない間に物語に引きずり込まれてしまった。「一番の敵は先入観」。この子は駄目な子だ、と先入観を持っている小学校の担任を遣り込める1話目から、映像が目に浮かぶ傑作だった。「アンスポーツマンライク」にも、涙腺緩みっぱなし…、笑わせ、泣かせ、心震わす。お見事。

2021/01/12

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