サキの忘れ物
ジャンル
「サキの忘れ物」のおすすめレビュー
「今月のプラチナ本」は、津村記久子『サキの忘れ物』
『サキの忘れ物』
●あらすじ● 喫茶店でアルバイトをしている千春は、ある日常連客の女性が忘れていった一冊の本を手にする。それは親や友達、誰からもまともに取り合ってもらえなかった彼女がはじめて読み通した本に。そして10年後、書店員となった千春の前に現れたのは―。ほんのささいな出来事をきっかけに人生は動き出す。表題作「サキの忘れ物」ほか、たやすくない日々に宿る僥倖のような、まなざしあたたかな全9編を収録。 つむら・きくこ●1978年、大阪府生まれ。2005年「マンイーター」で太宰治賞を受賞しデビュー。08年『ミュージック・ブレス・ユー‼』で野間文芸新人賞、09年「ポトスライムの舟」で芥川賞、11年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、13年「給水塔と亀」で川端康成文学賞、16年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、19年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞、20年「給水塔と亀」(ポリー・バートン訳)でPEN/ロバート・J・ダウ新人作家短編小説賞を受賞。その他の著書に『とにかくうちに帰ります』『エブリシング・フロウズ』などがある…
2020/8/6
全文を読むおすすめレビューをもっと見る
サキの忘れ物 / 感想・レビュー
こーた
圧倒的な日常に、おもわず涙が出そうになる。ほっこり良い話の表題作からはじまるが、以降は不穏さを増していき、じわじわ現実から離れていく。膝小僧には王国があり、喫茶店ではさまざまな周波数が飛び交う。先に何があるのかわからない行列に並び、河川敷にはガゼルがいて、真夜中にゲームブックを彷徨い、隣のビルへ飛び移ればそこには異界が拓けている。人知れず誰かの人生を動かしていることがある。何気なく手にした一冊が、人生を変えることだってある。何かを読みはじめたいあなたへ。この短篇集も、きっと誰かの大切な一冊になるはずだ。
2020/12/22
まこみや
初読み作家です。閉塞的で不条理な個の世界にいる人物に、ほんのちょっとした出来事がきっかけで、現実の世界への小さな風穴が開いて、そこから弱いながらも一条の光が漏れてくるようなお話だなあ。
2020/10/18
美紀ちゃん
全く本を読まない人が、ふとしたきっかけで本を読むようになる話、そしてやがて書店で文芸担当として働くようになるなんて、素敵すぎる。私は図書館教育の仕事をしてるので、本が苦手な生徒がどうしたら本を読むのか?すごくすごく考えている。だからこういう話には心惹かれる。「行列」は、思いやりが大切だと思う。私は実際に過酷な行列に並んだことが何度かあるのでわかる。でも『あれ』って何?めちゃ気になる!ガゼルは検索して画像を見た。なるほどかっこいい。
2020/10/02
修一郎
津村さんのいろんな試みを入れこんだ短編集です。「サキの忘れ物」がダントツで良かった。自分が選び取ったきっかけによって人生が少しだけいい方向に動き出すお話し。あの「給水塔と亀」と同じぐらい好きです。お気に入りは,あと「隣のビル」「王国」「Sさんの再訪」。「行列」と「真夜中のゲームブックのさまようゲームブック」は実験的で評判はいいけども自分は合いませんでした。ゲームブック全部読まないうちに完了しちゃうし。サキの忘れ物のお話に出てくる短編の名手「サキの短編集」をこれから読みます。
2020/08/20
HMax
久々の津村さん、短編集。第一位 サキノ忘れ物:やっぱり本が好きになると人生が変わりますよ。実感ありあり。第二位 Sさんの再訪:Sが誰なのか方程式を解いているうちに分かる真実。日記は面倒なので無理ですが、面白い。第三位 喫茶店の周波数:ぼーとする時間が大切です。
2020/08/29
感想・レビューをもっと見る