大切な人が殺されたら、あなたは復讐しますか? 復讐が合法になった『ジャッジメント』の世界
『ジャッジメント』(小林由香/双葉社) 日々のニュースや報道に接していれば否が応でも耳目に触れる凶悪な事件の数々。被害者となった人の無念や犯行の残忍さに心が沈み、犯人に対して怒りを覚えたことは誰にでもあるはずだ。では、もしその被害者が他人ではなく、自分にとってかけがえのない大切な人だったら、そのときに沸き起こる怒りはどれほどのものになるのだろう。「復讐してやる」――そんな気持ちを抑えることはできるだろうか。小林由香のデビュー作『ジャッジメント』(双葉社)は、凶悪事件の犯人に対する復讐が合法となった世界で、被害者遺族や関係者たちのそんな感情の葛藤と苦悩、それぞれの復讐を描く。
物語の舞台となるのは現代から遠く離れてはいないであろう近未来の20XX年。凶悪犯罪が増加の一途をたどる日本で「復讐法」という法律が新たに施行された。復讐法は犯人が被害者に対して行った暴力・加虐行為と同じ内容を刑罰として執行することを認めるもので、裁判によって適用が認められた場合、被害者、またはそれに準ずる者は「法の選択権利者」として旧来の法に基づく刑罰か、復讐法による刑罰を執行…