ネパール人経営のインド料理店「インネパ」は、日本人向けに特化した店/カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」②
『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』(室橋裕和/集英社)
「インネパ」というワードに漂うある種のニュアンス 本書のテーマである「ネパール人経営のインド料理店」は、巷では「インネパ」なんて呼ばれることがある。この言葉には、 〝本当のインド料理でも、ネパール料理でもないものを出す店〞 というニュアンスが込められているように思う。これはおもに、インドやネパールなど南アジアの食文化を愛する人々や、エスニックファンからの視線なのだが、そこにはちょっとした「侮蔑」が含まれているのでは……と感じてしまうのは僕だけだろうか。 確かに現地の文化に詳しい人からすると、「インネパ」は異質に映るかもしれない。インドの味つけとはだいぶ違う、甘みが強くてスパイスの刺激が薄いカレー、やたらにふわふわで巨大なナン、そこらのスーパーで買ったであろうゴマだれドレッシングのかかったサラダを出す店もあれば、インド亜大陸のどこを探したって見当たらない「あんこナン」「明太子ナン」なんてのを出す店もある。 「これのどこがインド料理だあ!」 と怒るカレーマニアの日本人もいる。…