次々と洗脳されてゆく家族 衝撃の“一家乗っ取り”サスペンス/『寄居虫女』櫛木理宇

タイトルは「ヤドカリオンナ」と読む。縁もゆかりもない家庭に言葉巧みに入りこみ、洗脳し、服従させ、暴虐のかぎりを尽くして去ってゆく、まさにヤドカリのような女性犯罪者・山口葉月の恐怖を描いたサスペンス長編である。
櫛木理宇 くしき・りう●1972年、新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞読者賞、『赤と白』で第25回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。「ホーンテッド・キャンパス」は現在第6作まで刊行されている大人気シリーズ。他の作品に『避雷針の夏』など。
「日本って知らない人が家庭に入りこんでくることが、まずないじゃないですか。その分、一度入りこまれてしまったらもろいと思うんです。家に入れるからには入れるだけの理由があって、その時点で心を許してしまっている。海外の有名なシリアルキラーより、日本人にはこういう犯罪者の方が身につまされて、怖い気がするんですよ」
と、作品テーマである“一家乗っ取り”について分析した櫛木理宇さん。こうした犯罪を絵空事と切り捨てるわけにはいかないのは、よく似た事件が現実に起こっているから…