注目の新刊 『家族ドミノ』 ダ・ヴィンチ2013年12月号
父の訃報を受け、久々に実家に帰った夏生、美春、英秋の三兄妹。各々の事情を抱え金を必要としていた3人は、1200万円の遺産を独り占めしようと企むのだが……。意外な展開の連続から感動のラストになだれ込む、読みだしたら徹夜覚悟のエンターテインメント。
父の訃報を受け、久々に実家に帰った夏生、美春、英秋の三兄妹。各々の事情を抱え金を必要としていた3人は、1200万円の遺産を独り占めしようと企むのだが……。意外な展開の連続から感動のラストになだれ込む、読みだしたら徹夜覚悟のエンターテインメント。
一度聞いただけで脳裏に刻まれるタイトル。さりげなく韻を踏む軽妙さと、どこか洒落の効いたテイストは、作品に流れるセンスをそのまま表している。 「骨格として浮かんだのは、男と女が喧嘩をし、ラストには仲直りして帰る、そこに非日常的なストーリーを盛り込んでいくということでした。日本にあるのに、なぜか〝ホテルブラジル〟という名を持つ舞台を得た途端、その非日常的物語は、僕の中でどんどん増殖していきました」と、執筆当時を振り返り、古川さんは言う。
ふるかわ・しゅんじゅう●1977年、熊本県生まれ。龍谷大学文学部卒。現在はIT企業に勤める。文学賞初投稿となった本作で「第3回野性時代フロンティア文学賞」受賞。好きな作家は、村上春樹、伊坂幸太郎など。 プロポーズの最中、喧嘩を始めてしまった次晴と夏海。そんな二人が「会社」の裏取引で得た1億円を持って逃走中のチンピラ・江古田に遭遇してしまったことから、突然ストーリーは走り出す。二人が逃げ込んだ冬期休業中の〝ホテルブラジル〟に次々と集まってくるのは、厄介な極道の人たち―江古田を追う頭脳派の船越に、江古田と船越の粛…
反省とは何だろう?――娘を失った父親から絞り出されるその言葉は〝反省〟という概念に潜む闇を顕わにする。それを免罪符として駆使する人々、そこに存在する悪意。その真実を相手に見てしまった時に怒りや哀しみが行き着く先――〝どんな償いを相手に求めれば、自分は納得できるのだろうか〟という問いが『罪の余白』の出発点だったと芦沢さんは言う。 「代金に代わり、小さな悪戯を求める店ができたことから、町が崩壊していくスティーヴン・キングの『ニードフル・シングス』という小説があるのですが、それぞれの小さな欲望や猜疑心、悪意が大きなうねりを持ってくる、その構造が面白いなと。そこに影響を受け、エンターテインメントとして思いついた仕掛けが、娘を死に追い込んだ少女たちに対する、償いの形でした」 あしざわ・よう●1984年、東京都生まれ。千葉大学文学部卒。出版社勤務を経て「第3回野性時代フロンティア文学賞」を受賞した本作でデビュー。執筆中の第2作は「本作の延長線上にある、さらにミステリー色の強い作品」だという。 高校のベランダから転落死した加奈。死の理由は何だったのか…
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