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大石圭

職業・肩書き
作家
ふりがな
おおいし・けい

「大石圭」のおすすめ記事・レビュー

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お茶目で可愛い年下の恋人…生まれて初めて異性を「好きだ」と感じ/ 大石圭『溺れる女』⑧

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――彼と出逢ってしまったのが、 悲劇のはじまり。 『アンダー・ユア・ベッド』『呪怨』『甘い鞭』の大石圭、最新作。 著者渾身の「イヤミス」ならぬ「イヤラブ」小説。

『溺れる女』(大石圭/KADOKAWA)

 わたしが江口慎之介との交際に同意した数日後に、わたしたちは渋谷の洒落たカフェで待ち合わせた。

 大学に通う時のわたしはいつも、トレーナーにジーパンというような飾り気のない格好をしていた。それでも、あの日は精一杯のお洒落のつもりで、踝までの丈のふわりとしたワンピースを身につけた。足元もいつものスニーカーではなく、踵の低いサンダルにした。

 化粧をしてみることも考えなくはなかった。けれど、結局、化粧はせずに出かけた。あの頃のわたしは、ファンデーションやアイシャドウどころか、リップルージュさえ持っていなかった。

 いっぽう、彼のほうは男性ファッション誌から抜け出てきたような格好をしていた。あの日も彼の耳にはピアスが嵌められていたし、女のようにほっそりとした指ではいくつかの派手な指輪が、襟元では華奢な革ひものネックレスが揺れていた。

 江口慎之介は長くて細い首…

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絶えず飢えているわたしの肉体…40キロの体重に焦ってトイレへ駆け込むも/ 大石圭『溺れる女』⑦

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――彼と出逢ってしまったのが、 悲劇のはじまり。 『アンダー・ユア・ベッド』『呪怨』『甘い鞭』の大石圭、最新作。 著者渾身の「イヤミス」ならぬ「イヤラブ」小説。

『溺れる女』(大石圭/KADOKAWA)

 一博とわたしがラブホテルを出た時には、時刻は午後十一時になろうとしていた。

 いつもそうしているように、今夜も一博がタクシーでわたしを世田谷区にあるマンションまで送ってくれた。

「カズさん、部屋に寄っていく?」

 タクシーを降りる前にわたしは訊いた。

「そうしたいところだけど、あしたも早いから、このまま帰って寝ることにするよ」

 タクシーの後部座席に窮屈そうに座った一博が笑顔で言った。

 一博はいつも午前七時すぎに出社していた。会社を出られるのはどんなに早くとも午後八時ぐらいで、たいていは九時か十時、遅い時には真夜中までオフィスで働いていた。

「わかったわ。それじゃあ、おやすみなさい。また日曜日にね」

 わたしは笑顔で言った。かつてはここまでのタクシー代を支払おうとしたことがあったが、一博が決して受け取らないので、今はそれを口にすることはなかった。

「うん。おや…

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年下美男子からの予想外の告白に、胸の高鳴りを抑えきれず…/ 大石圭『溺れる女』⑥

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――彼と出逢ってしまったのが、 悲劇のはじまり。 『アンダー・ユア・ベッド』『呪怨』『甘い鞭』の大石圭、最新作。 著者渾身の「イヤミス」ならぬ「イヤラブ」小説。

『溺れる女』(大石圭/KADOKAWA)

 江口慎之介から交際を求められたのは、彼が文芸サークルに入ってきて十日ほどがすぎた日の夕暮れ時のことだった。

 あの日、サークル活動を終えたわたしは、ほかのメンバーたちと別れてひとりで駅に向かって歩いていた。みんなには一緒にカフェに行こうと誘われたのだが、いつものように、わたしはそれを断っていた。

 みんなで集まってお喋りをするというのが、わたしは昔から好きではなかった。貴重な時間を無駄にしているような気がしたのだ。

 大学から駅へと続く道の両側にはソメイヨシノの樹がずらりと植えられていて、入学式があった頃には淡いピンクの花が美しいトンネルを形成していた。けれど、四月も半ばをすぎたあの頃には花はすっかり散ってしまって、木々の枝は芽吹き始めたばかりの緑の葉に覆われていた。

 わたしの背後から江口慎之介が「平子さん」と声をかけてきたのは、大学の敷地を出てすぐ…

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婚約者の身体の下で、今日もわたしは演技をする。別の男のことを考えながら…/ 大石圭『溺れる女』⑤

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――彼と出逢ってしまったのが、 悲劇のはじまり。 『アンダー・ユア・ベッド』『呪怨』『甘い鞭』の大石圭、最新作。 著者渾身の「イヤミス」ならぬ「イヤラブ」小説。

『溺れる女』(大石圭/KADOKAWA)

 飯島一博とわたしがフランス料理店を出たのは、間もなく午後九時になろうとしている頃だった。

 店を出たわたしたちはタクシーで渋谷へと向かった。日曜日の晩にはたいていそうしていたのだ。渋谷の繁華街の外れには、いかがわしいホテルが林立している区域があった。

 一博もわたしも都内のマンションにひとり暮らしをしているから、性行為をするならどちらかの部屋に行けばいいだけのことだった。だが、一博はどういうわけか、けばけばしい雰囲気のラブホテルが好きなようだった。

 その日曜日の晩、わたしたちが行ったのは、これまでにも何度か訪れたことのあるラブホテルだった。そのホテルにはいくつものタイプの部屋があったが、どの部屋も悪趣味でけばけばしいものだった。

 今夜の部屋は壁のすべてがショッキングピンクで毒々しく塗られていた。サテンのベッドカバーもショッキングピンクだった。巨大な…

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あの男とは、出逢ってはいけなかった…なのに。/ 大石圭『溺れる女』④

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――彼と出逢ってしまったのが、 悲劇のはじまり。 『アンダー・ユア・ベッド』『呪怨』『甘い鞭』の大石圭、最新作。 著者渾身の「イヤミス」ならぬ「イヤラブ」小説。

『溺れる女』(大石圭/KADOKAWA)

 江口慎之介(えぐちしんのすけ)と出会った時、わたしは法学部の三年生だった。当時、わたしが所属していた文芸サークルに、経済学部に入学したばかりの彼が入ってきたのだ。

 わたしが法学部に進学したのは、法律に関係する職に就きたいと望んでのことだった。けれど、心のどこかでは密かに『小説家になれたら、素敵だろうな』とも考えていた。本を読むのが好きだったわたしは、高校生だった頃から自分でも小説を書いていた。

 わたしが所属していたサークルは定期的に文芸誌を発行していて、サークルのメンバーは順番でその雑誌に小説や戯曲やエッセイなどを発表し、全員でその批評をしていた。サークルの会員の多くは、わたしと同じように小説家になることを夢見ていた。

 男子禁制というわけではないのだが、そのサークルでは四十数人のメンバーのほとんどが女子学生で、男子学生は数えるほどしかいなかった…

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脂肪がほぼ無いわたしが、体型維持のためしていること。/ 大石圭『溺れる女』③

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『溺れる女』(大石圭/KADOKAWA)

 その晩、東京駅近くのフランス料理店の窓辺のテーブルに向き合って、わたしたちはフルコースのディナーを食べた。

 一博が予約したのは、フランスで修行をした三十代のシェフが何年か前にオープンさせた店だった。その店はもともと評判が良かったようだが、シェフがコンテストで金賞を受賞してからは人気に火がついて、今夜の予約を取るのに一博は苦労したようだった。次々と運ばれてくる料理の数々は、料理も器もとても美しくて、手をつけてしまうのがもったいなく感じられるほどだった。

 手の込んだものを食べ慣れていないわたしには、料理の味はよくわからなかった。それでも、美食家の一博が「美味しい」「美味しい」と笑顔で繰り返していたから、わたしも彼に合わせて「美味しいわね」という言葉を何度となく口にしていた。

 落ち着いた雰囲気の店内には、音量を抑えた音楽が流れていた。テーブルの中央に…

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元恋人との再会が、甘い地獄のはじまりだった…/ 大石圭『溺れる女』②

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『溺れる女』(大石圭/KADOKAWA)

 わたしの名は奈々。平子(ひらこ)奈々。

 二十九年前の四月の初めに、わたしは日本海に面した地方都市で生まれた。銀行員の父は転勤族だったから、わたしたち家族は父が異動になるたびに日本海側の都市を転々とした。母は基本的には専業主婦だったが、パートタイムで働くこともあった。

 父はすらりとした美男子で、笑顔が素敵な男だった。母もまた美しい人だったが、昔から体重の増加に悩まされ続けていたようで、今も毎日のようにダイエットと美容体操に励んでいた。

 わたしには史奈(ふみな)という名の二歳下の妹がいる。わたしと同じように東京の大学を出た史奈は百貨店の販売員をしていたが、二年前に同僚の男と結婚して都内のマンションに住んでいる。少し前に女の子を出産し、今は百貨店に復職し、子供を育てながら働いている。

 史奈とわたしは実の姉妹だったけれど、似ていると言われたことはほとん…

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元恋人との再会が、甘い地獄のはじまりだった…/ 大石圭『溺れる女』①

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『溺れる女』(大石圭/KADOKAWA)

プロローグ

 大都会の真ん中に摩天楼のように聳(そび)え立つ高層ホテル。

 その上層階の静まり返った廊下をひとりの女が歩いている。薄いストッキングに包まれた細い脚を震わせ、黒く光る樹脂製のキャリーバッグを引いて歩いている。

 女はその骨ばった体に張りつくようなワンピースを身につけている。胸から上の部分が剥き出しになったワンピースで、黒くて薄い生地を通して臍(へそ)の窪みや突き出した腰骨の形がはっきりとうかがえる。女がまとったワンピースの裾は、ほんの少し身を屈めたら下着が見えてしまいそうなほどに短い。

 女が一歩踏み出すたびに、身につけているアクセサリーの数々が揺れて光る。恐ろしく高いパンプスの細い踵が、廊下に敷き詰められた分厚いカーペットに深々と沈み込む。

 強張った女の顔には素顔がわからないほど濃密な化粧が施されている。痩せた体からは、スズランやジャスミ…

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