「こういうアニメを作りたい!」から生まれた、構想30年の大冒険活劇『レオナルドの扉』(真保裕一)
メインコレクションが並ぶ回廊からは離れた美術館の片隅で。しんとした空気のなか、一心不乱にスケッチ作品を見つめる青年──物語の余韻の中でページを繰り、“あとがき”の文章に触れた途端、得も言われぬ感慨とともにそんな青年の姿が見えてきた。「自分で好きなアニメが作れたら最高だろうな」という夢を抱き、マンガ原作を書き続けていた30年前の真保裕一の姿が。
真保裕一 しんぽ・ゆういち●1961年、東京生まれ。アニメーション制作に携わった後、91年『連鎖』で江戸川乱歩賞を受賞、デビュー。96年『ホワイトアウト』で吉川英治文学新人賞、97年『奪取』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞、2006年『灰色の北壁』で新田次郎賞を受賞。著作に『ダブル・フォールト』など多数。
「作家デビューをする前、僕はアニメーションの仕事をしていたんです。はじめの頃はアニメーターとして絵を描いていたので、美術館にはよく行っていましたね。その時、夢中で見ていたのが、画家たちの残したスケッチ類。その中にレオナルド・ダ・ヴィンチの“手稿”と呼ばれるノートがあったんです」 絵画や数学、天文学と…