「北の国から」演出家が記す自らの半生は、脚本より奇なり?
冠婚葬祭にはドラマがある。ふたりの新しい門出を祝し…もしくは故人を偲び、集う人びとが繰り広げる人間模様――。 著者は国民的ドラマ「北の国から」を手掛けた演出家。彼は五十七歳のとき、再婚することになる。…お相手は三十歳年下の医大生。その部分だけクローズアップすると、「うらやましい」と思われる男性や「どうしてそんな年上のおじさんと?」と疑問に思う女性もいらっしゃるのではなかろうか。 「理想のタイプはステキなロマンスグレーのおじさま」と豪語するわたし(独身)ではあるが、もし自分が著者と同じ立場になったら戸惑うのは間違いない。 実際、本文を読み進めていくと、年下の女性(妻)の言動にかなり押され気味な老年期の男性の姿が見えてくる。 そんな著者の人生に、彼が長年関わった「北の国から」というドラマが被り、彼の周りにいる人たちの人生がクロスしていく。 幼き三人の我が子の行く先をどこまで見届けることが出来るのだろうか…、そういう老いた親として抱く想いも、時折文面から顔を覗かせる。 そこにわたしははっとしてしまうのだ。 普…