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続きと始まり

続きと始まり

続きと始まり

作家
柴崎友香
出版社
集英社
発売日
2023-12-05
ISBN
9784087718560
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「続きと始まり」のおすすめレビュー

〈戦争が終わるたびに/誰かが後片付けをしなければならない〉。地震やコロナ、変えられない過去の記憶を丁寧に掬い上げる小説

『続きと始まり』(柴崎 友香/集英社)

 平坦な日常を淡々としたタッチで描く――柴崎友香氏の小説は、そんな風に評されることがままある。だが、彼女は、一見平坦そうな日常を凝視することで、誰かの奥底に眠っている無数のドラマを書き起こしてゆく。彼女の新刊『続きと始まり』(集英社)にも、同様の感慨を抱いた。様々なドラマを彼女なりの感性で掬い上げることで、作品に奥行きと深みが生まれている。

 本書は一編の小説だが、複数の登場人物が異なる視点で現実を切りとってゆく。描かれるのは、2020年3月から2022年2月までの3人の日常。滋賀県在住の石原優子(26歳)、東京在住の小坂圭太郎(33歳)、柳本れい(46歳)。主軸となるのは、彼/彼女らの震災やコロナ禍にまつわる記憶である。優子は東京のデザイン事務所に勤務していたが、今は滋賀県で生活している。家族は夫と7歳の娘と3歳の息子。日用品や衣料雑貨を通信販売する会社でパート勤務だ。

 圭太郎には妻と4歳の娘がいる。彼は居酒屋で料理人をしていたが、緊急事態宣言によって店は営業を停止。新たな働き口を見つけたばかりだ。れいはフリ…

2024/1/15

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続きと始まり / 感想・レビュー

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いつでも母さん

何年ぶりかの柴崎作品。良い、とても好かった。コロナ禍の3人の日常が淡々とあった。そこには震災やそれ以前、TVやSNSで知る戦争もある。時間は誰の上にも平等なのに同じ経験や感覚では無い。それぞれの今を生きているんだ。そこに私の営みもあった。これからも在る。続きが続くだけで終わりはないのだなぁ・・ポーランドの詩人の詩がとても好く効いている。そして、本作のタイトルも実に良い。読み友さんの素敵なレビューに誘われて良い読書時間だった。

2024/04/26

ででんでん

皆さんに読んでほしいなと思った本。自分とは年齢も性別も異なる3人が、それぞれにコロナ禍を生きている。コロナ禍だけではなく、数々の震災、そして戦争…そしてもちろん日々の日常を生きる3人の仕事や家族関係。捉えきれないほどの事が起こるのが、生きているということだ。私達の日々はまさに「なにも終わらないのに、次々始まって、忘れていくばっかりで。」自分が知らない間、忘れてしまっている間にも世界中で、いや日本でもいろんなことが続いていて、そしてまた始まっていく。「続きと始まり」のなか、傍観し、かきわけて自分も生きる。

2024/02/15

なゆ

コロナ禍の不安で先行きの見えない日々。きっと住んでる場所で、職業で、家族構成で、感じ方や大変さも違う。10年後、20年後.この日々をどんなふうに思い返すのだろう。こうして読むと忘れかけてる事もあって、そんな自分に驚く。「なにも終わらないのに、次々始まって、忘れていくばっかりで」パート従業員の優子、飲食店で働く圭太郎、独身フリーカメラマンのれい。それぞれの視点であの頃をなぞる。コロナ禍だけじゃない、阪神淡路や東日本の大震災をはじめ、戦争も災害も非日常は突然始まり終わりはいつなのかわからない、ということ。

2024/01/28

konoha

じわじわと感情を動かされる。余韻がすごい。主婦の優子、飲食店で働く圭太郎、カメラマンのれいの生活をコロナ禍の2020年から交互に書く。コロナ禍の不安がリアル。柴崎さんの空間と時間の表現が上手い。阪神淡路大震災、東日本大震災、子供時代を思い出すことも3人の重要なテーマ。一見幸せなようでも問題にぶつかりながら生きる3人に自然と感情移入している。個人と政治や社会との関わり方に目を向けているのもいい。「終わりと始まり」の詩が印象的。私たちは何が起こっても続けて、始めなければならないというテーマが一貫している。

2023/12/31

hiro

WHOのパンデミック宣言がでた20年3月から22年2月までの間、パートで働く優子、調理師の圭太郎、フリーカメラマンのれい、離れた所に住む男女3人が順番に主人公を務め、それぞれの職場・家庭の問題を含めコロナ禍の中での日々の生活が描かれているだけでなく、更に過去の二度の震災を振り返り、また新たな戦争も含めた不安定な時代が描かれている。まだ2年から4年前を描いている作品だが、読み終えて忘れかけていることもあって自分自身に驚く。最後には3人の繋がりと題名にスッキリできた。芸術選奨文部科学大臣賞受賞も納得。

2024/03/30

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