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流跡

流跡

流跡

作家
朝吹真理子
出版社
新潮社
発売日
2010-10-01
ISBN
9784103284611
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流跡 / 感想・レビュー

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コットン

『きことわ』の前に書かれた作品で初めのほうで「…明朝体9ポイント行アキ6ポイント、余白をとった紙片のなかにおさまるきめ細やかな活字が意味あるふりをして。あるいは文字の集積であるかのように装って。記述されたことが本をひらくたびどこかに逃げ去っているんだろうか。」と書かれていて、何日も何日も同じ本を目が追う時、こんななんということもない有機物としての紙の上に書かれた本から活字が逃げるという表現が面白い。淡々とした中に不思議な低い温度の底流があり、『きことわ』より面白く読みました。

2020/04/28

寛生

【図書館】フランス文学的なものの《流跡》を観る。辺見庸の文が紡ぐ生体からは想像を絶する匂いが漂ってくるが、朝吹の水死体からは匂いはしてこない。在る意味、この本は我々日本人の特に朝吹あたり世代の問題を浮き彫りにしているのかもしれないと想う。石原慎太郎風に言いたくはないが、どうしても《身体性》がないと第一印象を持つ。それは彼女の個人の問題ではなく、日本人が《身体》を持つことも自覚できない所で、苦悶している姿なのではないか。《死》を確かに描写しようと努力しているが、《身体》《肉体》がないので、《死》がない。

2015/02/02

風眠

ある意味、割り切って読めるぶん『きことわ』より、私はこっちの方が好きです。一遍の散文詩を読んでいるような感覚でした。読むことと書くことの空間を行ったりきたりするなど、語彙やイメージでこの文章に雰囲気を持たせているところが素晴らしい。

2011/12/29

田氏

読みたい文章と、書きたい文章とは、同一なのだろうか。かつてこんなふうに書きたいと思って書こうとした文章の、その先の先にあるはずの文章がここにあった。うれしくもあるしつらくもある、その感じを表そうとしても、遠遠しい水平線のようすにあてるような擬態語が見つからないかぎり表せる気はしない。文字を画面に縢ったそばからほどけて逃げだす。融滌する。爛壊する。同じ言葉を使ってみても、同じ情景にはならないし自分の景色にもならない。金魚の笑いかたは「ほたほた」。すすきは「たわたわ」と生える。光は「しなしな」とためこまれる。

2020/11/14

kaoriction@感想は気まぐれに

さらさら と ひらひら と 流れてこぼれて。ゆらめいて はためいて、するすると はらりはらりと すり抜けて。読むことも書くことも、なかなか終わらない。はみ出して、生きることからも はみ出して。どこへ行くの?言葉という「書かれたものは書かれなかったものの影でしかな」いものは。 詩的というより詩そのものを読んでいるような作品。長い散文詩だ。言葉をとても丁寧に、神経質に選んでいるような気がする。輪廻的な世界観だなぁと思ったら、著者は博士課程で近世歌舞伎専攻だった。なるほど。影に惑い、惑わされ、私たちはどこへ…

2018/05/20

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