【海堂尊インタビュー】ミッシングリンクになるのは明るく楽しい学園小説だった
海堂尊『アクアマリンの神殿』は奇妙な成り立ちを持つ小説だ。海堂の小説はすべて同じ世界観の中で書かれており、当然のことながら作品相互にも関連がある。同じ登場人物が複数の作品に顔を出すのである。1冊を読むとさらにもう1冊を読んでどのように世界が広がっているのかが知りたくなる。そこが大きな魅力でもある。 ところが1つの問題が起きた。複数の作品に顔を出す佐々木アツシというキャラクターについて矛盾が生じてしまったのだ。 こっそりと修正して辻褄を合わせる手もあるが、海堂はそうしなかった。あっと驚くアイデアで小説を書き、矛盾を是正してしまったのである。それが2010年に発表された『モルフェウスの領域』(角川文庫)だ。『アクアマリンの神殿』はその続編に当たる作品である。主人公は佐々木アツシ、桜宮学園中等部3年に在籍する学生であるが、同時に桜宮湾に存在する未来医学探究センターのたったひとりの職員でもあった。彼には級友の誰も知らない秘密があるのだ。
海堂 尊 かいどう・たける●1961年、千葉県生まれ。2006年、『チーム・バチスタの栄光』で第4回「このミステ…