誰がこの毒から逃れられる? 絶望の現代社会とわずかな希望『半暮刻』月村了衛インタビュー
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年11月号からの転載です。
人は罪を犯す。誰もが犯罪者になる可能性を宿している。だが、同じ「犯罪」でも、追い詰められた結果だったケースもあれば、単なる遊び感覚でなされることもある。
取材・文=門賀美央子 写真=川口宗道
月村了衛さんは新刊『半暮刻』で、軽い気持ちから罪を犯した若者二人を描いた。 「本作は、“半グレ”に取材したとあるドキュメンタリー番組がきっかけになって生まれました」 半グレとは、暴力団ではないものの、ヤクザ顔負けの犯罪行為をする組織集団のことだ。1991年に暴力団対策法が施行されて以降、黒社会と一般社会の狭間で暗躍するようになったという。現在の半グレは特殊詐欺グループやヤミ金融など明らかな違法行為のほか、闇バイトの斡旋や貧困ビジネスなどグレーゾーンの商売を手掛けては荒稼ぎしている。 そんな彼らに特徴的なのは「人を人とも思わぬ」心の持ちようかもしれない。カモられる人間は愚かさゆえの自己責任であり、うまく立ち回る自分たちはただ賢いだけ。なんら罪はない、と本気で信じていそうなのだ。 「私は、…