芥川賞史上もっとも売れた本『限りなく透明に近いブルー』。ドラッグや暴力を描いた村上龍の原点/斉藤紳士のガチ文学レビュー①
『限りなく透明に近いブルー』(村上龍/村上龍電子本製作所)
はじめまして。 芸人活動を細々と続けながら、文学系のYouTubeをしています斉藤紳士という者です。 今まで数々の小説を読んできた僕がオススメする作品を毎回取り上げていきたいと思っています。 まずは、現代作家の中で最重要でありながら常に新しい分野に挑戦し、動き続けている作家・村上龍さんの作品を紹介します。
村上龍のデビュー作『限りなく透明に近いブルー』は発表当時、その内容の過激さ・衝撃度で話題になった。 群像新人文学賞を受賞し、この作品が世に出たのが1976年。 どっぷりオジサンの僕が生まれる前の話なので、相当昔の話である。 だけど、作品から発せられる瑞々しい熱量は令和の現在でも色褪せていない。 発表当時は今のように情報が氾濫している時代ではなかったので「若者の実態」を大人たちが知るのはテレビや雑誌の片隅にあるわずかな情報しかなかった。 しかもこの作品で描かれているのはもっと退廃的でもっと非道徳な常道から外れた若者たちだったので、当然大人たちは知り得ない「若者の実態」だった。 …