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オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)

オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)

オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)

作家
米原万里
出版社
集英社
発売日
2005-10-20
ISBN
9784087478754
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オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

プラハのソヴィエト普通学校の舞踊教師オリガ・モリソヴナ。反語法を駆使する彼女は、年齢も不詳なら過去も謎に包まれていた。20年後に志摩(主人公)がそれを解き明かしてゆくのだが…。フィクションではあるが、これは著者の米原万里さんにとっての青春の熱い回想記である。そして同時にそれは「ソ連とは何だったのか?」を問う総括記でもあった。彼女は自身の体験や伝聞を客観化する必要があったのであり、巻末の参考文献群はそのためのものである。本書を経て、同世代の、そしてオリガたちの世代をも含むソ連の人々に真に連帯できたのだろう。

2016/09/08

absinthe

オリガ=モリソヴナは口が悪いけど皆に愛されたダンスの先生。でもその来歴には悲しい秘密があった。ラーゲリ、クラーグ。血も凍るような恐ろしい強制収容所。米原万理さんの自伝に近いと思われる、実話エピソードから作られたフィクションだが、その描写の上手さから共産圏の生活の裏側の恐ろしさが伝わる。少女時代の微笑ましいエピソード、スターリン体制化の息苦しい現実、ソ連と日本の教育の違いなどさまざまなエピソードが織り交ぜられながら、スリリングに核心に近づいていく。

2020/09/18

buchipanda3

著者のプラハの学校時代を描いた「嘘つきアーニャ…」の別版とも言える小説。こちらもがっつりと読み応えがあり、魅力溢れる物語を堪能した。中身はかつてのソ連の体制が絡む話で重い内容も多い。特に中盤以降はあまりにも理不尽な悲しみに呆然。それでもこの本はそれに挫けない力強さがあった。それが読み手に乗り移ってくる。当時、子供の自分には見えていなかった大切なものを追い求めるシーマチカの姿も印象的。オリガやエレオノーラの告白に強く胸を打たれたが、改めて授業の様子を読み返すと、人が持つ尊いものを感じずにはいられなかった。

2021/05/06

ゆいまある

こんな面白い本を今迄読まずにいたとは。寝る間も惜しんで昼寝する勢いで読み耽った。米原さんがプラハで出会った人々がモデルになったそれは壮大な物語。オリガ・モリソヴナは70過ぎだがセクシーで凄く強い。だが彼女には悲惨な過去があり(ここからはフィクション)、その謎を解く内にスターリン時代沢山の人が殺され、ラーゲリ送りにされた歴史が出てくる(勿論物凄く調べて書かれていてその熱量たるや)。引き裂かれた恋人、引き裂かれた親子、ウクライナを追われてラーゲリで死んでいった人達。泣いたし笑った。もっと書いて欲しかった。

2022/03/09

ちょろこ

生きるってこういうこと…の一冊。夢中になって読んだ。この作品を読めて良かったという思いに満ち溢れた。30数年前のソビエト時代の学校の強烈キャラだった恩師達の半生を辿っていく謎解き物語はそれぐらい自分の心を掴みかき乱した。スターリン時代の粛清、背負わなくて良い罪を背負い、それでも生き抜く女性たちの姿に圧倒された。絶望の中、ささやかな生きる希望を見出し、道を選び生き抜く。生きるってこういうこと…そんなことを教えられた気がする。そして謎解きと共に咀嚼し噛み締めるあの時のあの言葉、最高の拍手気分で本を閉じた。

2019/04/02

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