この怪異はフィクション? それとも…!?『火のないところに煙は』/佐藤日向の#砂糖図書館㉔
私は本屋に立ち寄るのが大好きだ。
本屋にも個性があると思っているのだが、自分の好みと相性が合う本屋を見つけるのが1番楽しい。
店舗ごとに異なる本がピックアップされているが、その本を説明するポップで、私の中での本屋との相性は大体決まる。大好きな本屋の1つに、品川駅構内の本屋があるのだが、毎日品川に通ったこの夏の舞台公演期間中は、気づけばそこで沢山の本を手に取っていた。
今回紹介する芦沢央さんの『火のないところに煙は』という作品もその本屋で出逢った作品のひとつだ。 本作は、神楽坂一帯を舞台にした怪談について、作者が取材をする中で巡り合った事件を小説にすることで"怪談"の真の怖さを記している「フェイク・ドキュメンタリー怪談」だ。
評判の占い師、家自体に霊が取り憑き悪夢を見せる不思議な体験、承認欲求が強い見知らぬ女の子―――これらの事件は全て原因が異なっているように見えて、実は繋がっていた、というところが、本作の1番のホラー的要素だと思う。
得体の知れない何かとの縁を、作者自身が細い糸で少しずつ繋げていると思っていたのに、怪異のことを考え始めた時点で向こうからジ…