山下敦弘「大阪なんばと北区赤羽には、共通点がありました」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、関ジャニ∞の渋谷すばる単独初主演作『味園ユニバース』を監督した、山下敦弘さん。記憶喪失になった男が、歌の力で自分の新しい居場所を見つける……。フィクションの中に、個人的な思いをめいっぱい盛り込んでいるという。
映画の舞台は、大阪。なんば千日前に実在する元グランドキャバレー「味園ユニバース」周辺で巻き起こる物語だ。山下さんは愛知県出身だが、かつて大阪で暮らしていた経験がある。自主映画製作に夢中だった、大阪芸術大学時代だ。
「悪名高い“新世界”に住んでいました(笑)。2004年に東京に出るんですけど、二度と帰ってくるかと思ったんですよ。六畳の部屋に男二人で住んでて、片付けしないからゴミだらけで。シャワーも出が悪いし、水も臭くて飲めないし、自分の人生において最底辺の時代だと思っていたんですよ。でも、この映画を撮るために大阪の街をロケハンしてみたら……面白かったですねー。あの頃は余裕がなかったから見えていなかったものが…