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グレイスレス

グレイスレス

グレイスレス

作家
鈴木涼美
出版社
文藝春秋
発売日
2023-01-14
ISBN
9784163916545
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「グレイスレス」のおすすめレビュー

芥川賞候補に選ばれた鈴木涼美の第二作小説! アダルトビデオ業界の化粧師として生きる女性が見ている景色は?

『グレイスレス』(鈴木涼美/文藝春秋)

 芥川賞候補となった『グレイスレス』(鈴木涼美/文藝春秋)の「私」はアダルトビデオ業界の化粧師で、撮影が始まれば泥のように流れてしまう化粧を、女優たちにほどこすのが彼女の仕事だ。

「私」が過去に付き合った男たちはみな、遠回しに転職をすすめてきた。親に紹介できないとか、あなたがその仕事をする必要はないんじゃないの、とか。実際、「私」の父親は経営者でアーリーリタイアし、翻訳家の母親と海外で暮らしている。森の中にたたずむ、意匠をこらした西洋建築の一軒家で、どこか浮世離れした祖母とふたりで暮らす「私」は、わざわざその業界に足を踏み入れる必要がなさそうに見える。けれど転職をすすめられるたび、彼女が仕事ではなく、恋人に対する興味を失うのは、仕事を通じて女優たちの人生の片鱗に触れているからだ。

 どうせすぐに崩れ落ちてしまう化粧にこだわりを見せ、男の性欲を煽るための顔だとわかっていながら、女優たちはそれぞれ、自分にとって納得のいくメイクを求める。そこに、〈身体も性も自尊心も数時間の間は放棄する彼女たちがそれでも明け渡さないも…

2023/1/20

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グレイスレス / 感想・レビュー

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starbro

第168回芥川龍之介賞受賞作・候補作、第二弾(2/5)です。鈴木 涼美、前回のノミネート作に続いて2作目です。 前回よりも巧くなっていると思いますが、受賞までのインパクトは、ないと言うことでしょうか❓ 次回は長編を期待、著者には、桜木紫乃や金原ひとみのような作家を目指して欲しいと思います。本書でAV業界の化粧師という職業があることを初めて知りました。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163916545 【読メエロ部】

2023/02/05

美紀ちゃん

芥川賞候補作になったので読んでみた。以前読んだギフテッドも良かった。作者の鈴木涼美さんは東京大学大学院社会情報学修士課程修了。すごい。主人公のメイクの仕事をしている女性は、聖月(みづき)。いい名前だと思う。お仕事小説。下ネタ的な語彙はたくさん出てくる。けれど内容は淡々としていて、へーなるほどと思った。面白かった。撮影中に女優が「ダメ」とか「ムリ」っていうのは演技だと思われてしまうので、止めたい時は、はっきりと「カット」と言うこと。おばあちゃんの考え方が素敵だと思った。鈴木涼美さん気になる。学校図書館は×

2023/04/04

fwhd8325

小説の概念を改めて考えさせられる作品でした。この感性を受け止めるにはかなり難しいように感じます。私が、ずっと若ければ、きっとこの感性を自分なりに表現できるのにと悔しい思いです。にっかつロマンポルノが全盛であれば、きっと映像化されていただろう。それは神代辰巳なのか藤田敏八なのだろうか。

2023/02/28

モルク

ポルノ女優の化粧師をしている主人公。森のなかに佇む古いがモダンな感じの邸宅に祖母とふたりで暮らしている。そこでの生活と仕事現場、時々泊まるカプセルホテルがたんたんと描かれている。著者の経歴からいってAV撮影現場ってこんな感じなのだろうと思う。120ページほどの短い作品。だが読むのに結構苦戦する。そうか、芥川賞候補…なるほど。私は芥川賞の方の作品とは相性が悪いらしい。

2024/01/26

いっち

グレイスレスを辞書で調べると、「品のない、見苦しい、恐れのない」などの言葉が並ぶ。主人公はAV業界で化粧師をしている。祖母と住んでいるのは、森の中の西洋建築の家。祖母との生活の場面は不要に感じた。既視感のある退屈さ。AV業界の場面は新鮮で良かった。この著者だからこそ書ける場面だと思った。主人公は、「どうして鏡の前の椅子の後ろに立っているのかと、どうしてその椅子に座らないのか」を問い続ける。つまり、なぜ化粧師をしているのかと、なぜAV女優にならないのか。実力で長期間働ける化粧師を選んだ主人公は、したたかだ。

2023/02/05

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