みずからの小説真髄が溢れ出た 心も、身体も“踊る”超大作!
チャルメルの荘厳な響きが風を渡り、虎旗のはためきとともに銅鑼の音が鳴り響く。異国情緒溢れる路次楽を奏でながら現れる極彩色の行列。人々の熱い視線の先にいるのは、唐風の衣装に身を包んだ美少年たち──薩摩琉球侵攻後の1634年から幕末まで18回行われた“江戸上り”。徳川将軍や琉球国王の代替わりの際、琉球王朝から派遣された使節団が慶賀や謝恩の挨拶に向かう。葛飾北斎が「琉球八景」を描くなど、熱狂的な琉球ブームが江戸、さらに行列のゆく美濃路や東海道で巻き起こり、鎖国中の日本を魅了したという。
池上永一 いけがみ・えいいち●1970年、沖縄県生まれ。94年『バガージマヌパナス』で第6回ファンタジーノベル大賞を受賞。『風車祭』で直木賞候補に。2008年刊行の『テンペスト』は累計120万部の大ベストセラーに。著作に『レキオス』『トロイメライ』『統ばる島』『唄う都は雨のち晴れ トロイメライ』など多数。
「楽童子、と呼ばれる彼らの姿を描いた瓦版は飛ぶように売れ、首里城内に今も残る絵図には、なまめかしい少年たちの姿に倒錯の世界へと誘われている江戸の人々の様子も描かれ…