怪談四代記 八雲のいたずら (講談社文庫)
怪談四代記 八雲のいたずら (講談社文庫) / 感想・レビュー
中玉ケビン砂糖
【日本の夏は、やっぱり怪談】『凶事をなす者には七代祟る』などというものの、八雲(はうん)家の場合は「不思議な祝福」が適当なのかもしれない。エッセイではあるものの、曾孫に当たる著者が曾祖父ラフカディオ・ハーンの足跡を辿りながら、来訪地に伝わる伝承や過去に聞いた怪異譚を回想し、さながら「再話文学紀行」とでも形容すべき諸国漫遊の記録。根岸鎮衛『耳袋』は町奉行という身分でありながら風流人・好事家でもあった彼の特殊なケースだし、柳田國男『遠野物語』は語りと採話によって織りなされる稀代の作品だが、
2023/08/27
sin
「信じるものには訪れる」といって怪談だから“霊”という訳ではない。それは“縁”…文中にも表現されているが古来日本人は無宗教なのではなく祖霊を尊ぶという。ハーンの曾孫であられる作者がこれほどまでに不思議な出会いを繰り返すこと、それこそ曽祖父ハーンを忍んでその足跡を辿るその行為から自然と舞い来たったものではないだろうか?現代人はまるで根無し草のように自分たちの依って来たったところを省みることはないが、自分たちのルーツに思い至る時、却って共に生きる人々との縁を実感することが出来るのかも知れない。
2016/08/09
優希
小泉家の4代目が描く怪談と小泉八雲のこと。世界各地をめぐり、日本にたどり着いた八雲。100年の時を経て著者が語る八雲像に惹かれました。特別な家族エッセイと言えますね。
2022/07/28
ホークス
八雲の作品に共通する、薄暗く荒涼としたイメージが好きだ。それは彼が育ったアイルランドの風土と関連するらしい。怖い話に自意識は邪魔である。「怖い」と言う事が信仰的な性質を帯びた心の状態だからであり、この点彼の作品には自意識を寄せ付けない厳しさがある。本書は八雲の曾孫である民俗学者が、学問的な畏敬、祖先への追慕、多文化主義の実践などを絡めて、世界中の所縁の地と人を訪れる紀行文である。四代にわたる不思議な因縁話が読みどころだが、好みは分かれそうだ。自分の名を「昔の私鉄沿線駅前の純喫茶」と言うが、確かに有ったね
2017/04/29
Sakie
ラフカディオ・ハーンを曾祖父に持つ学者の随筆。ハーンはギリシャとアイルランドにルーツがある。どちらも一神教一辺倒ではない国だ。神ではない、人に働きかける見えざる存在への親和性はありそうだ。もちろん日本も。私は彼を故国喪失者として見ている部分がある。ハーンは日本に渡って落ち着き、日本の暮らしを楽しんだ。しかし、明治の松江の人々は紅毛だ鬼だと疎み、盆踊りを観ているところへ砂を投げかけられたと記録が残っている。「日本の面影」にはそんな気配は露ほども見せない。仕方ないとはいえ、切ないことだ。
2023/09/24
感想・レビューをもっと見る
「小泉凡」の関連作品
ベスト・エッセイ2022
- 作家
- 青木耕平
- 青山文平
- 彬子女王
- 井上理津子
- 岩松了
- 宇佐美 りん
- 内田洋子
- 海猫沢めろん
- 大矢 鞆音
- 小川さやか
- 奥本 大三郎
- 小山田浩子
- 温又柔
- 角田光代
- 加納愛子
- 川上 容子
- 川本三郎
- 神林長平
- 岸田奈美
- 岸本佐知子
- 金田一秀穂
- 倉本聰
- 黒井千次
- 小池水音
- 小泉武夫
- 小泉凡
- 斎藤 陽道
- 酒井順子
- 佐倉統
- 佐々涼子
- 沢木耕太郎
- 椹木野衣
- 茂山 千之丞
- 柴田一成
- 志茂田景樹
- 鈴木聡
- 鈴木 忠平
- 瀬尾夏美
- 高樹のぶ子
- 高見 浩
- 高村薫
- 武田砂鉄
- 田中卓志
- 田中優子
- 谷 慶子
- 辻真先
- 夏井いつき
- 二宮敦人
- 林真理子
- 原田宗典
- 藤沢周
- ブレイディみかこ
- ほしよりこ
- 星野博美
- 堀江敏幸
- 万城目学
- 町田康
- 松浦寿輝
- 松本 猛
- マライ・メントライン
- みうらじゅん
- 三浦しをん
- 三浦雅士
- 村井 理子
- 村田喜代子
- 元谷 有希子
- 柳田邦男
- 山本貴光
- 湯澤 規子
- 横尾忠則
- 李琴峰
- 寮美千子
- 鷲田清一
- 尾崎世界観
- 尾上 松緑
- ミロコマチコ
- 出版社
- 光村図書出版
- 発売日
- 2022-08-05
- ISBN
- 9784813804147