冴えないおっさん神様が男女の縁を結ぶ? 『鴨川ホルモー』作者 万城目学の最新作『パーマネント神喜劇』
『パーマネント神喜劇』(万城目学/新潮社)
「神様」と聞けば、人の形をしたこの世を統べる全知全能の存在をイメージする。しかし『パーマネント神喜劇』(万城目学/新潮社)に登場する神様は、頼りなく、ハプニング持ちで、どこか間が抜けていて、奇怪な服を着ている中年姿のおっさんだ。実在する人間ならば、間違いなく奇人変人扱いを受けているだろう。そんな姿のくせに1000年もの間、縁結びの務めをやってきたという。物語は、このおっさん神様の縁結びの対象、あるカップルのデートの場面から始まる。
篠崎肇(しのざきはじめ)は、彼女の坂本みさきとフレンチのディナーを楽しんでいた。メインも食べ終わり、食後のデザートをつついていたとき、みさきは肇に言った。
「私、肇に直してほしいところがあるんだ」
さきほどまでの楽しそうな彼女が一転、急に語調が険しくなり、肇は「ついに来たか」と心の準備をした。というのも、休日もとれないほど仕事に追われていた肇は、なかなかみさきと会うことができていなかった。そこでなんとか時間を作って、8000円のフレンチフルコースを奮発したのだ。しかしそれでも…