小説の世界が著者の現実を侵すヘンテコきわまりないSF
同じ著者の「亜空間要塞」とともに70年代SFの奇書といわれている小説です。 そうやって亜空間要塞事件も終了し、どうやってかは「亜空間要塞」のレビューを読んでいただくとして、とりあえず作者の半村良も筆を置いたのであります。
自宅近くの豪徳寺あたりを散歩しながら、紅葉を愛で、1歳になった我が子のことを考え、それでも万年筆のキャップをとって新しい原稿に取りかかる日々、時には麻雀仲間が集まる予感に気もそぞろ、そんなとき見知らぬ客が訪ねてきた。
読者のひとりだろうと話し始めると、自分は吉永佐一だという。「亜空間要塞」の登場人物だ。細部は違うが私たちは「亜空間要塞」に行ってきたのです、しかもそのことは1年も前にあなたがあの本に書いてしまっている、とそんなことを抜かすのです吉永は。いよいよ妖しくなってきた。ほんと違うのは僕らは3人組で、そういうからには半村自身も含めた4人組にやっぱりなって亜空間要塞への冒険がここからはじまるという寸法であります。
この作品のヘンテコなところは、半村がみずからの作家生活を綴る私小説のような形をとりながら、実際の諸作家の名前や受賞した…