名前で呼ばれたこともなかったから:―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫 り 5-2)
名前で呼ばれたこともなかったから:―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫 り 5-2) / 感想・レビュー
Shoji
前作の『空が青いから白をえらんだのです』に感動したので、続編の本書を手に取った。前作で学習済のため、感動も控え気味ではありましたが、それでも心に染み入りました。受刑者への「社会性涵養プログラム」として詩を教える作者が、受刑者が書いた詩を掲載しています。受刑者たちは、出自や家庭環境の問題、個性が他者と少し異なるだけで理不尽な扱いを受けたものが多く、一般教養も低い目です。ゆえ、書いた詩は生々しく、心の叫びそのものだと感じました。「受刑者の多くは、加害者になるまでは被害者だった」の一文がズシンときました。
2024/03/19
シンプルねこ
過酷な生い立ちの少年たち。彼らの紡ぎ出す言葉に胸が痛かった。施設より刑務所の方がましとか刑務所はいいところだとかそういう詩を書いている。私は本当に胸が痛かった。何も言えなくなった。
2024/02/24
みかん
今出会えて本当によかったと思った1冊。ひとつひとつの詩にこもった想いはもちろん、それに対する教官の言葉、他の子どもたちの受け止めがあたたかくて優しくて。かつて被虐待児であった彼らが、家庭で、学校で、こんなふうに温かい関わりを得られていたらと思うと胸が苦しくなりました。 「刑務所の高い塀は、彼らを懲らしめ閉じ込めるためのものではなく、世間の荒波から彼らを守るための防波堤。」この言葉に込められた真意を胸に刻み、再出発を誓った彼らを差別や偏見で社会から締め出すことがない世の中でありたい。
2024/04/10
波多野七月
「わたしは 毎日 階下を通るとき マンホールを踏もうか かわいそうか 迷います 今日もまた 迷います 明日もまた 迷うと思います」少年刑務所と聞いて、どんなイメージを浮かべるだろうか。極悪非道な、怪物のような存在だと恐怖に怯えるだろうか。だが彼らもまた虐待や貧困や育児放棄や発達障害などに苛まれ、ときに被害者であったのだと胸を突かれた。そんな少年の一人である、吃音のある少年が紡いだ詩の前に、ただ静かにうなだれた。
2024/04/25
てくてく
奈良少年刑務所詩集の続編。はっとさせられる少年の詩もさることながら、その詩に対する著者や少年たちや法務教官の反応も重要で、内心を表現することにはそれに見合う場所や信頼感みたいなものが大事なのだろうと思った。社会性涵養プログラムや元法務教官による子育てで大事にしたいことなどが後半にあって、読み応えのある一冊。あらゆる公共施設の待合室に置いてもらいたいと思った。奈良刑務所は廃庁後の一般開放日に見学に行きましたが、当時の矯正に対する意欲を感じさせる建物でした。
2024/03/10
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- 出版社
- 光村図書出版
- 発売日
- 2022-08-05
- ISBN
- 9784813804147