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2020年の恋人たち (中公文庫 し 46-4)

2020年の恋人たち (中公文庫 し 46-4)

2020年の恋人たち (中公文庫 し 46-4)

作家
島本理生
出版社
中央公論新社
発売日
2023-12-21
ISBN
9784122074569
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「2020年の恋人たち (中公文庫 し 46-4)」のおすすめレビュー

島本理生『2020年の恋人たち』が加藤シゲアキの解説付きで文庫化! 「母の反対側へ進もうとすればするほど、離れられなくなる」

『2020年の恋人たち』(島本理生/中央公論新社)

 人と繋がり続けるために、語る人と黙る人がいる。小説『2020年の恋人たち』(島本理生/中央公論新社)の主人公・前原葵は後者だ。彼女は他人に期待しない。幼い頃から自立することを強いられる環境で育ってきた彼女は、自然と人に頼らず解決するすべを身につけてきたし、心を許した相手には人一倍感情を注いでしまうからこそ、傷つかないように心に蓋をする。誰を相手にしても、せいぜい刃がかする程度の距離感を保って、踏み込まないよう、慎重にふるまう。

 本書は、葵が交通事故で亡くなった母親が遺した、開店準備中のワインバーを引き継ぐ物語である。長年、妻子ある男の愛人だった母は、まるで親らしくなく、葵に傷を負わせた最初の一人だ。決裂しているわけじゃないけど、心からわかりあえたわけでもない。そんな宙ぶらりんの状態で永遠の別れを迎えた葵が、会社員のかたわら店をやろうと決めたのは、自分たちをあしざまに言う義理の兄――母の恋人の息子に対する反発からだ。けれど、それは期せずして葵にとって、もういない母と対話を重ねる行為にもなっていく。

2024/1/17

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2020年の恋人たち (中公文庫 し 46-4) / 感想・レビュー

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結衣花

2020年と聞けば誰しもが未曾有のウイルスに脅かされ、見えない未来を不安に思いながら窮屈に過ごしたことを思い出す。そんなコロナ禍の恋愛小説かなと思いきや基礎の舞台は2018年。恋に奔放だった母を不慮の事故で喪い、ただ開店することだけが決まっていた空っぽのワインバーを残された主人公の葵の、切っても切れない異性との交流が目まぐるしく描かれる。恋の酸いも甘いも知らない私からしてみれば、矢継ぎ早に訪れる恋のようなものに若干辟易してしまいましたが、解説を目当てに出会った本書との出会いもまた、ひとつの経験かな。

2024/02/10

エドワード

始まりは2018年。会社員の前原葵は、仕事を続けながら事故死した母のワインバーを継ぐ。情熱的かつ冷静な葵が魅力的だ。親類たち、会社の人間関係、様々な問題が描かれる。癖のある男たちもものともしない。葵は結婚も子供も要らない。新しい女性だ。ストーカー男から葵を守り、スペインまで一緒に旅行した“恋人” 海伊とも別れる。数ページだけ描かれる、2020年のコロナ禍の飲食業の模索。最後が2019年のクリスマスの煌めきという構成が面白い。コロナ禍は歴史の確たる1ページだ。2024年、葵の店「白」は輝いていることだろう。

2024/04/24

GORIRA800

ラブコメ、小説版みたいな感じ 漫画とかでやったらなんでそんな出会いあんなん笑ってなってしまいそうだけどなんかこの作品独特のムードに引っ張られて、結局主人公は恋人に恵まれないかわいそうな物語なのだと気づいていったら主人公のことが愛おしく思えていった でも魅力的な異性がたくさんいたとしても付き合うことができないのは現実的だ 両思いなのだとしても付き合えない そんな事実に気づき、この小説のひとつの見方に気づいた自分は少し大人に近づいているのかもしれない

2024/04/12

ぱぴこ*2

装丁が素敵です。葵さん、モテすぎ。島本理生さんの中ではヒリヒリ感少なめかな。読みやすかったです。【積み本:7】

2024/04/12

かすみ

東京タワーの表紙が好きで買ってから、長く積ん読していた。好きな色のカバーを選ばせてくれる有隣堂で、この表紙のイメージもあってこれは間違いなく青色だわと強めの直感で選んだ色が、"葵に似合う色"として登場していて嬉しい。葵が選択していくすべてに全力で頷きながら一気に読んだ。時々疲れて泣いた。「誰に強いられることもなく自分が選んだのなら、どちらだって。」胸の中で"始めない"と呟いて無理やり防御力を上げて自分を守ろうとしていたのに、ひとつ踏み込んだ場所へ行けるようになって、葵はたしかに自由になった。

2024/04/20

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