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星のように離れて雨のように散った (文春文庫 し 54-4)

星のように離れて雨のように散った (文春文庫 し 54-4)

星のように離れて雨のように散った (文春文庫 し 54-4)

作家
島本理生
出版社
文藝春秋
発売日
2023-09-05
ISBN
9784167920951
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星のように離れて雨のように散った (文春文庫 し 54-4) / 感想・レビュー

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NAO

最初、コロナ禍の中のもの静かな男女のラブロマンスかと思った。おとなしい女の子という印象だった主人公の春だが、周囲の人々の言葉から実はかなり変わったところのある人物だと分かってきて、終盤近くになって、なぜ彼女がそんな風になったかが解き明かされる。小説を書こうと決めたのは、自分自身を解き放ちたかったから。研究論文に選んだ『銀河鉄道の夜』は、そこに書かれている宗教観に救いを見出したかったから。新興宗教にのめり込んでいる親や親族を持った子どもは、その宗教を強要されなくても、こんなにも強い影響を受けてしまうとは。

2023/10/05

エドワード

大学院生の春が夏のキャンパスを歩く冒頭の清々しさ。同級生との会話、恋人の亜紀との会話も爽やかだ。しかし読み進めると、春の心に実に多くの傷や悩みがあることがわかる。父の失踪、父方の親類との絶縁。結婚を前提に同棲しようという亜紀に春は「愛しているってどういうこと?」と問う。深すぎる。誰が的確に答えられよう。春の心理描写がヒリヒリするほど生々しくて、悲しくて、だけど亜紀の気持ちもわかる。21世紀の若者の生きにくさ、愛する辛さをここまでビビッドに描けるって、さすが島本理生さんだ。最後の短編小説に救われる思いだ。

2023/11/26

ゆずな

改稿があるとのことで、文庫版で再読。『銀河鉄道の夜』を予習し今の自分で読むと、2年前に読んだ時とは印象が変わった。主人公の春が自分自身を「認められない、受け入れられない、肯定できない」ことが彼女の言動の節々に現れるが、『銀河鉄道の夜』とキリスト教を主題とする副論文、修論としての小説と向き合うことで父の失踪という過去のしがらみから解放されていく過程を描く。島本理生は単行本あとがきで彼女の著作『生まれる森』がやっと完成したというようなことを記していた。救済したい側、救済されたい側の共依存を紐解いている。

2023/10/24

グレートウォール

恋愛だけでなく、常に宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の研究が物語の根底に流れていて、読み終えたとき読者は長い旅路を終えたような気持ちになる。『銀河鉄道の夜』以外にも文学作品が引き合いに出され、文学と宗教を巡る個々の考え方も心地良く、自分の考え方も含めて思考が広がる感覚があった。 どうしてもこのコロナ禍に描いておかねばという筆者の気持ちが伝わるような気がする。 人間関係は本当に難しいが、ちゃんと言葉にして目の前の人間関係を投げ出すことなく結び直していく様は、自らこうしなければと勇気をもらえた。

2023/11/12

こばゆみ

宮沢賢治を研究の題材にしている女子大生と、その彼氏の関係性を描いた物語。島本作品に出てくる女子には、同性としてちょっとイラっとすることが多いけど、この作品の主人公はそれが顕著だった。けれどそのぶん、売野さんのサバサバしたキャラクターが際立っていて良かった。

2023/11/21

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