かわぐちかいじ 中央線沿いに住むきっかけとなった憧れの漫画家。船会社の息子が上京し『沈黙の艦隊』を描くまでの読書歴を語る【私の愛読書】
さまざまな分野で活躍する著名人に、お気に入りの本を紹介していただくインタビュー連載「私の愛読書」。今回お話を伺ったのは、漫画家のかわぐちかいじ先生だ。数多くのヒット作を世に送り出すかわぐち先生が挙げた愛読書は、1960年代に描かれた貸本漫画『漫画家残酷物語』、第51回芥川龍之介賞受賞作『されど我らが日々──』、夏目漱石の“前期三部作”の中の一作『それから』の3作品。一見バラバラに見えるが、若き日のかわぐち先生に大きな影響を与えた本だという。
(取材・構成・文=成田全(ナリタタモツ、撮影=金澤正平)
■フッと頭に浮かんだものを選んだ3冊
──かわぐち先生は、学生時代に永島慎二さんの『漫画家残酷物語』に出会わなかったらおそらく漫画家にならなかった、と以前インタビューでお話しなさっていましたが、どんなところに惹かれたのでしょう?
かわぐち:中学生ぐらいですかね、その頃は「週刊少年マガジン」や「週刊少年サンデー」はもう出ていたんですけど、貸本漫画にハマって。貸本漫画には今の青年漫画の感じがあって、さいとう・たかをさんとか白土三平さん、平田弘史さん、水島新司…