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光炎の人 下 (角川文庫)

光炎の人 下 (角川文庫)

光炎の人 下 (角川文庫)

作家
木内昇
出版社
KADOKAWA
発売日
2019-09-21
ISBN
9784041082126
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光炎の人 下 (角川文庫) / 感想・レビュー

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タツ フカガワ

無線機試作品で頓挫した音三郎は、学歴を詐称して東京の陸軍研究所へ潜り込む。やがて念願の真空管無線機が完成するが、その直後満州の関東軍のもとへと出向を命じられる。かつて自分の発明品で人々を幸せにしたいと願って音三郎は、いまや無線機の実績を上げるためなら戦争さえ厭わない考えに変わっていた。明治~大正~昭和期を背景に、近代化の波に翻弄された男の一生がなんともやるせない。ラスト音三郎の「利平……なんの冗談じゃ」の声が虚しく響く。これまで読んだ木内作品のなかでいちばん重たい作品かも。

2021/08/08

エドワード

音三郎は純粋で人を疑うことを知らない。科学を信じ、無線機の技術開発に努める。野心的な彼は、実力者・弓濱を頼って、学歴を偽り東京の陸軍十板研究所へ移籍する。軍人となった幼馴染で、妹の夫・利平と再会し、利平の上司の娘と結婚した音三郎は、昭和の訪れとともに、野望に燃え、無線機の軍事利用にあえて協力する。これも時代の運命か、懸命に開発に努めた彼の技術が発揮されたのは満州某重大事件だった。非情な軍が彼に与えた報酬は…。時々の判断が次々と裏目に出る下巻、圧巻の終幕。音三郎が平和な時代に生きていたら、の感に絶えない。

2019/10/09

piro

自分が望む技術の実証に盲目的な音三郎。物語の中で少しずつ折り重なってきた小さな違和感が、結末につながった感。技術の向上にのめり込み周囲が見えなくなることの危うさ、ピュアであることの罪深さを語る様な物語でした。何が正解だったのかはわからない。けれども音三郎の歩んだ生涯は、何かしら足りないものがあったのだと思います。個人的には音三郎が感じた負の意識が理解できると共に、利平の思いもよくわかる。今の世にも通ずる、成り上がることの難しさを強く感じる、寂しい思いに襲われた結末でした。

2024/04/22

earlybird_kyoto

重い内容でした…。徳島のたばこ農家の三男・音三郎は技師として自ら開発した機器を世に知らしめたいという思いがどんどん募り、やがて学歴も偽って帝大卒の巣窟の官営研究所にまでたどり着きます。軍人となった幼なじみの利平と再会する。科学技術にのめり込んで初心を忘れてゆく技術者とともに、「組織の駒」として自らの行動を律する軍人。いずれも承認欲求を満たそうとする人間の寂しさを描いているようで、とても哀しい話でした。

2022/01/30

こうちゃん

一つの血筋、一つの思想、一つの理念、一つの執着、そして一つの言葉が人生を変えてしまう。同じ言葉が時が違うと、別の結果を生んでしまう。 かなりの読み応え。著者さんはだいぶ入念に参考にして調べものしたのだろう。

2020/11/24

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