苦しいとき、逃げたくなるときに、自分を「解き放つ呪文」とは。『昨夜のカレー、明日のパン』/佐藤日向の#砂糖図書館㉙
人間関係の構築というのはとても難しい。「親しき中にも礼儀あり」という言葉があるように、どれだけ長い間一緒に過ごしたとしても相手に対して礼儀を欠いてはいけない。
それでも長い時を過ごすことで、以前は気にならなかった相手の不可解な行動が目についたりする瞬間がある。そう思ってしまう私は心が狭い人間なのかもしれない、と思ってしまったことが多々ある。
今回紹介する木皿泉さん作の『昨夜のカレー、明日のパン』という作品は、"考え方は人それぞれなのだ"ということを私に教えてくれた。
知っている方もいると思うが、木皿泉さんというのは和泉務さんと妻鹿年季子さん、ご夫婦の脚本家である。作家が2人いる作品を読むのは初めてだったが、安直に優しい言葉を連ねるのではなく、現実を受け入れた状態でどうやったら前を向けるのかをサポートしてくれる、格言にあふれた作品だった。
本作では7年前に夫を亡くしたテツコと、その夫のギフによる日常が、短編で描かれている。
最初は「義父と嫁」の関係だった2人が、夫が居ない状態の7年の月日を経て、あだ名のように定着していって"ギフ"と呼んでいると…