無情の世界
無情の世界 / 感想・レビュー
春が来た
理性を超えた欲望なのか、欲望を超えた理性なのか。未知なる世界との遭遇とでも言えばいいのか。ひとつひとつの捉え方がいちいち狂ってる。狂気さへの恐怖なんてものは軽く通り越していく。思わず無情という意味を調べたほど、この短編たちに対する私思いは無情なのだけれど嫌いじゃない。「トライアングル」の情報量の多さというか言葉の濃さというか、ほんとにもうめんどくさいんだけど、何故だろう、好き。
2021/01/31
おはぎ
これくらい突き抜けてくれないと阿部和重じゃない、という感じがする。他にない魅力がやっぱりあって、阿部作品は久しぶりに読んだけれどもとても引き込まれた。表題作の文量が圧倒的に少ないことには拍子抜けしたが。
2023/02/10
乱読999+α
トライアングルズ・無情の世界・鏖(みなごろし)3つの短編。「トライアングルズ」 一見すると至極真面な正論であるように見えるが、よくよく考えるとズレた、単なる屁理屈をこねているだけ。そんなズレた三角関係を続ける男の顛末の話。ここまで来るともはや笑いしか起こらない。他の2編も狂気に溢れているが、もはや笑うしかない。狂気の裏側には、狂気を突き詰めると、笑いに繋がる。逆に、笑いの裏には狂気が佇んでいる事も多々ある。そんな思いを起こさせる畳み掛けるように展開する小説は興味深かった。
2024/02/14
ume-2
2編の短編と1編の中編の3作収録。「トライアングルズ」は狂気の世界に少なからず踏み込んだ男の手紙という形式。一方的な語りに途中で心が疲れる。「無情の世界」は現実と妄想の境界が危くなった高校生のネット相談形式。語られる内容が赤裸々でオブラートが無い。そして中編「鏖」(みなごろし)。これが最も分かりやすい。全ての問題を他者の責任にしてしまう人々の生き方を示しながら、単にそれを糾弾するだけではなく、そこから発生する破壊衝動に自身の自虐的な憧れも投影させる。責任転嫁の世の中に後味悪くなりながら、ある種の爽快感も。
2016/06/06
不純
表題作無情の世界は面白かったが、鏖はその上をいく面白さだった。暴力性と不条理をスピード上げてトリップさせていくような息つく間も与えてくれないシームレスな場面変換。結果的に血みどろになった後にいつものごとく、洋楽の歌詞を並べる展開に笑ってしまった。不条理が勢いよく踊っているこの凄みは阿部和重しかだせない。
2019/07/20
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- 9784766002294