アメリカの夜 (講談社文庫)
アメリカの夜 (講談社文庫) / 感想・レビュー
ケイ
リズムに慣れるのに時間を要した、リズムに慣れると、バカバカしい若者の凝り固まった青い屁理屈に延々と付き合わさせれるのだが、それが不快でもない。こういう、自己の中で中途半端なまま吐き出されずに溜まった思考エネルギーは滑稽で、痛々しく、結局何も生み出さないまま終わるのだろうが、その着地を見事にしたのは、作者の阿部和重が滑稽な自分を中山唯生にうまく演じさせ、彼が自分に課した鍛錬(それは、まわりをあんぐりとさせるような勘違いから生じたのに)が結局、実を成していたからだろう。最後の唯生のキレ方がロックでよかった。
2015/05/20
yoshida
阿部和重さんのデビュー作品。阿部和重さんの作品は物語に入り込むまで、時間を要する場合がままある。デビュー作品でもあり本作は尚更か。読みやすい作品ではない。狂気と発露と暴走、そしてカタルシス。阿部和重さんの作品に内包する要素が詰まっている。喜代三と撮影現場に向かうところからカタルシスと回収は始まる。この為に阿部和重さんの作品を読んでいると言っても過言ではない。冒頭でのブルース・リーとジークンドーが回収される場面は笑ってしまう。最後の主人公の振れ幅。この狂気とカタルシスを充分に楽しむことが出来た。
2021/02/28
けい
阿部和重さんのデビュー作品。主人公中山唯生は「映画」の世界に自己を置き、唯々思案にふけっている。筆者自身を主人公に投影し、戦う姿勢を明らかにする。序盤は理屈ぽく、こねた文章は読み進めるのに苦労する。我慢して読み続けると筆圧が上がって一気に物語が動き出す。洗練される以前の筆者の文章、少し青臭い印象を受けるが、これはこれで魅力的だった。
2014/03/10
コットン
トリュフォーの同名映画につられて読んでみました。素直だけれど読み手を選ぶ蓮實重彦を少し柔らかくした文体でこの本のリズムに乗り切れなかった感じだったけれど、筆者が映画好きなのがわかり好感触でした。
2017/04/09
Mishima
「映画の人」である主人公が「本の人」になっていった、ということを説明する、としながら、幾つかの物語(例「ドン・キホーテ」)や日常の些末なエピソードを盛り込みつつも、その大凡は、主人公の取り留めのない思考を聞かされ終わる、という読む人を選ぶであろう本。思考面では「春分の日」「秋分の日」などにいちいち意味付けし偏執的なこだわりを見せる一方、日常は単調極まりない主人公の二面性。結末はタイトルの「アメリカの夜」についてが説明されていたが、著者の「映画への薀蓄と思い」を語るための本だったのかな、と。
2016/07/23
感想・レビューをもっと見る
「阿部和重」の関連作品
何げなくて恋しい記憶 随筆集 あなたの暮らしを教えてください1 (随筆集 あなたの暮らしを教えてください 1)
- 作家
- 三崎亜記
- 松家仁之
- 木内昇
- 蜂飼耳
- 駒沢敏器
- 山根基世
- 三浦しをん
- 山田太一
- 水内 喜久雄
- 多和田葉子
- 高 史明
- 佐々木美穂
- 野崎歓
- 関川夏央
- 戌井昭人
- 山根一眞
- 池澤夏樹
- 森絵都
- 萩尾望都
- 萩原朔美
- 長嶋有
- 高橋源一郎
- 長島有里枝
- 元村 有希子
- 姫野カオルコ
- 赤坂真理
- 片山健
- 大久保真紀
- 山口未花子
- 増田明美
- 阿部和重
- 寺尾 紗穂
- 川島小鳥
- あさのあつこ
- 片桐はいり
- 秋野暢子
- 前田英樹
- 川内倫子
- 内田春菊
- 平田 明子
- 呉美保
- 那波 かおり
- 辻村深月
- 森田真生
- 砂田麻美
- 大宮エリー
- 温又柔
- 坂本美雨
- ジェーン・スー
- 金井真紀
- 望月衣塑子
- 速水健朗
- 木内みどり
- 新井紀子
- 加藤千恵
- 本名陽子
- 内田樹
- カヒミ・カリィ
- 久保田智子
- サヘル ローズ
- 仲野徹
- 加瀬健太郎
- 山崎ナオコーラ
- イッセー尾形
- 安東量子
- 大竹しのぶ
- 曽我部恵一
- 津野海太郎
- 島田潤一郎
- 俵万智
- 出版社
- 暮しの手帖社
- 発売日
- 2023-03-20
- ISBN
- 9784766002294