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古市憲寿

職業・肩書き
作家、タレント・その他
ふりがな
ふるいち・のりとし

プロフィール

最終更新 : 2018-09-20

1985年、東京都生まれ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。著書に『絶望の国の幸福な若者たち』『大田舎・東京 都バスから見つけた日本』など。NHK Eテレ『ニッポンのジレンマ』MCも務める。

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「怪我してない?」急に抱きしめられ――鼓動が速いのは緊張してるせい? それとも…/アスク・ミー・ホワイ⑫

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写真週刊誌のスキャンダル報道によって芸能界から姿を消した元俳優・港颯真。冴えない毎日を送る一般人・ヤマト。アムステルダムの地で偶然出会った二人の関係は、交流を重ねるうちに変化していく――。辛口社会学者・古市憲寿氏が描く、ロマンチックBLストーリーをお送りします。

『アスク・ミー・ホワイ』(古市憲寿/マガジンハウス)

 彼にとっては初めて来る街のはずなのに、なぜか目的地を知っているかのように迷わず歩いて行く。二ブロックほど進んだところに、運河に面したベンチを見つけたので二人で腰掛ける。トートバッグの中からサンドウィッチを出して港くんに渡す。気温はまだ10度に届いていないだろうが、コートを着たままなのでそれほど寒くない。 「君、できる子だね。さっきガソリンスタンドで買ったパンよりよっぽどおいしいや」 「そんなこと言ってくれるの、港くんだけですよ。付き合ってた彼女からは、いつも気が利かないとか鈍臭いって、怒られてばっかりだったから。私がいつも決めてばっかりじゃない、って」 「へえ、サクラちゃんだっけ。そうやって彼氏に文句を言いたい子だったんじゃないの。愛情…

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「このまま帰るのもったいないよね」成り行きで観光に誘われたヤマトは、二人で街に…/アスク・ミー・ホワイ⑪

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『アスク・ミー・ホワイ』(古市憲寿/マガジンハウス)

 分厚い雲が東へ流れ、この時期にしては明るい日差しが街を照らしている。 「せっかくハーグまで来たんだから、このまま帰るのもったいないよね」 「観光していきます? 絵画が好きならマウリッツハイス美術館とか、エッシャー美術館とかあります。あとちょっと落ち着きたいならトラムに乗ってデルフトって街に行くとか。Uberかタクシーでもすぐです」 「マウリッツハイス美術館って、フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』があるところでしょ。ハーグはこの前ちょっと回っちゃったから、デルフトに行ってみたいな」  デルフトという名前がすぐに出てきたのは、サクラと行ったことがあるからだった。デルフト陶器に興味があるという彼女に誘われて、レンタカーを借りて工房まで行った…

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「実は男が好きなんだ」港のカミングアウトに、親友が示した反応は…/アスク・ミー・ホワイ⑩

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『アスク・ミー・ホワイ』(古市憲寿/マガジンハウス)

 港くんは大きく息を吸い込み、そして大きく吐き出す。少し口元を緩めながら、眉間に皺を寄せている。Uberは112号線を走って行く。市街地を少し離れ、モダンなデザインのマンションやビルが木々の隙間から見えた。  せめて街中だったら、車窓から見える何かで他愛のないことを話せたのかも知れない。だけどこんな風景を見ていても、適当な話題が何も思いつかない。ちらっと横を向くと、港くんはまだ苦々しい顔をしていた。 「渋谷隼さんと港くんは付き合ってたんですか?」  どうしても気になって、ついに僕は余計なことを聞いてしまう。 「ううん。隼は、ただの友だち。キスをしたこともない。でも芸能界でたった一人、俺がカミングアウトしてた相手。ドラマで共演して仲良くなっ…

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偶然見えてしまったiPhoneの画面には、なぜか裏切った親友の写真が…/アスク・ミー・ホワイ⑨

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『アスク・ミー・ホワイ』(古市憲寿/マガジンハウス)

3月20日

「ヤマトくん、今日って何してる?」  起き抜けに出た電話からは、久しぶりに聞く港くんの声がした。  彼のホテルで料理を作った日から三週間ほどが経っている。あれから一切連絡が来ないものだから、自分が何かまずいことをしたのではないかと不安になっていた。スキャンダルのことを聞いてしまったのがいけなかったのか、それともビザ申請や生活に必要なことは一通り理解してしまい、僕がもう用済みになったのか。  電話番号は知っているのだから、ショートメールで僕から連絡してもよかったのだが、何となく気後れしていた。一度会っただけの人間からしつこくメッセージが来ても気味悪がられるのではないか。しかも相手は芸能人だ。何を勘違いされているのだと思われかねない…

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「俺のこと売ったの、そいつなんだよ」人気俳優スキャンダルの裏に隠された悲しい過去/アスク・ミー・ホワイ⑧

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『アスク・ミー・ホワイ』(古市憲寿/マガジンハウス)

 ホテルの部屋に戻って、食材をスーパーの袋から出していく。メインディッシュを作る間にすぐ食べられるように、チーズにはクラッカーとトマトを盛り付けた。港くんはそれを一つだけつまむと、向こうで休んでいいというのに、僕がキッチンで料理する様子をずっと覗いている。動じないふりをして、オリーブオイルを入れた鍋を準備して、切った豚肉を炒めて、酒を降りかけて、水を加える。煮立ってきたら、火を弱めてアクを取り除き、蓋をして弱火にした。  鍋を煮込んでいる間に、ニンニクとタマネギをみじん切りにして、トマトを角切りにする。オリーブオイルを入れたフライパンに、ニンニク、タマネギを混ぜ合わせた後で、羊の挽肉を加えてよく炒める。水分がなくなってきた頃にトマトを加え…

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信じられない。今自分に笑顔で話し掛けているのが、有名な元芸能人だなんて/アスク・ミー・ホワイ⑦

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写真週刊誌のスキャンダル報道によって芸能界から姿を消した元俳優・港颯真。冴えない毎日を送る一般人・ヤマト。アムステルダムの地で偶然出会った二人の関係は、交流を重ねるうちに変化していく――。辛口社会学者・古市憲寿氏が描く、ロマンチックBLストーリーをお送りします。

『アスク・ミー・ホワイ』(古市憲寿/マガジンハウス)

「ヤマトくん、アムスに住んでどれくらい?」 「三年くらいです」 「いい街だね。初めは世界を転々としようと思ったんだけど、居心地の良さにびっくりしちゃった。だからちょっと長く住むのも悪くないと思ったんだ。そんな話を昨日、君の友だちとしてたら、ヤマトくんが詳しいっていうから」  そこまで一気に話した後、港くんは急に僕のほうを向く。感情が読みにくい顔だと思った。微笑んでいるのに悲しんでいるようにも見えるし、僕を馬鹿にしているようにも見える。 「そもそも俺のこと知ってる?」 「港颯真さん、ですよね?」  知っているも何も、今日は朝から何度もWikipediaを読み返していたし、インスタグラムのリロードも繰り返していた。  しかしそれを伝えると気持…

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知らない番号からの着信。掛けてきた相手はまさかの…!?/アスク・ミー・ホワイ⑥

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『アスク・ミー・ホワイ』(古市憲寿/マガジンハウス)

 吹雪は止んで、空は気持ちいいほどの青空だったが、まだ気温は氷点下のままだ。まっすぐ家に帰ろうとしたはずなのに、何を考えたか自然と足が赤灯地区へ向かっていた。その間も何度かiPhoneを確認してしまうが、新しいメッセージはない。  街を歩いていれば、また港くんに会えると思ったわけではない。彼にどうしても会いたいというよりも、少しくらいのハプニングが起こってもいいのではないかと変な期待を抱いてしまったのだ。  アムステルダムの赤灯地区は、世界的に有名な風俗街である。飾り窓ともいうが、通りに面したガラス張りの建物で、風俗嬢たちが客を待っていた。彼女たちは国が認可を受けた自営業者で、場所を借りて堂々と売春をしているのだ。  サクラと付き合ってい…

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二人が裸で抱き合う姿を想像するヤマト。ふとした瞬間に柔らかい唇の感覚がよみがえり…/アスク・ミー・ホワイ⑤

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『アスク・ミー・ホワイ』(古市憲寿/マガジンハウス)

3月1日

 iPhoneの目覚ましアラームが鳴る前に起きてしまった。窓の外はまだ薄暗いが雪は降っていないようだ。5畳に満たない個室には荷物が溢れていて、最近ではマットレスの上にまでパソコンや雑誌を置き始めている。床には乱雑に服や書類が積み上げられていて、足の踏み場もない。白い壁は薄汚れているし、照明もIKEAで買ってきた20ユーロのペンダントランプだ。家具らしい家具のないこの部屋だけを写真で見たら、誰も僕がオランダに住んでいるとは信じないだろう。しかし、もともとストレージだった部屋を300ユーロという格安で借りているのだから文句は言えない。  この狭い現実を目の前にすると、昨晩自分の身に起こったことが俄には信じられない。僕は、あの港くんにキ…

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