私小説
「私小説」のおすすめレビュー
直木賞作家や音楽アーティスト、芸術家…さまざまな分野の表現者たちが紡いだ新しい”私小説”の形
『私小説』(金原ひとみ:編/河出書房新社)
作家が経験したことのほぼそのままを書くスタイルの「私小説」(代表例は梶井基次郎作『檸檬』、田山花袋作『布団』など)は、20世紀初頭に確立しました。そしてSNS全盛の2020年代、経験したことをそのまま、ないしは多少の脚色を添えて(あるいは全くもって架空のエピソードを)公に示すことは当たり前となりました。そんな時代に、作家たちはどんな私小説を生み出すことができるのかという模索がなされているのが本書『私小説』(金原ひとみ:編/河出書房新社)です。雑誌『文藝』(河出書房新社)で連載された私小説特集(尾崎世界観、西加奈子、島田雅彦、町屋良平、しいきともみ、金原ひとみ、千葉雅也、水上文のそれぞれ1話ずつ)に、エリイによる書き下ろしが加えられています。
本稿では3作をピックアップして紹介したいと思います。まず人気バンド「クリープハイプ」の尾崎世界観が書いた「電気の川」。「コロナ禍で開催された自分のライブについて人気ライターが書いた文章を、自分で読み上げたときに感じる違和感」という、かなり属人的かつピンポイントな感情…
2023/3/30
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私小説 / 感想・レビュー
starbro
金原 ひとみは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者が「文藝」2022年秋季号の特集「私小説」で責任編集を務めた短編集の単行本化、オススメは、しいき ともみ(初読)の「鉛筆」&金原 ひとみ「ウィーウァームス」です。 https://web.kawade.co.jp/bungei/42997/
2023/03/12
アキ
現代における私小説とは何なのでしょう。金原ひとみが責任編集した自身も含む7人の私小説は、かつての私小説というカテゴリーと明らかに別もので、それでいて読者は作者の実生活を覗いているかのような刺激を享受する。千葉雅也が「私小説論」で、人間そのものが目的性と脱目的性の両輪でできているダブルシステムである以上、素朴な意味での私小説というのはあり得るのかと述べている。私小説とは自らの人生が偶発的であるというフィクション性から生まれると定義できるのかもしれない。私小説としては「鉛筆」しきいともみが、一番良かったです。
2023/06/03
pohcho
金原ひとみ責任編集の私小説集。私小説というとウジウジジメジメしている、もしくは赤裸々で大胆というイメージだが、いずれもそんなイメージとは違う作品ばかりだった。金原さんはご自身の書く小説そのもの。西さんのカナダ移住、乳がん闘病のことは最近知ったばかりなので、知らなかったら驚いていたと思う。意外によかったのはエリイさん。コロナに肝炎に妖しい整体師。つきあってる友人が妖しすぎて笑える。どこまで実話かわからないけど私生活が心配な感じ。話としては面白かった。しいきともみさんの自伝的小説もよかった。初小説とはすごい。
2023/03/23
優希
金原ひとみさんが責任編集した「私小説」になります。虚構と現実の狭間の中で響く音楽のような作品たちに酔いました。どことなく濡れた香りがするのは金原さんが編集したからでしょうね。
2023/03/07
竹園和明
金原ひとみ責任編集。「私小説」というテーマで8人が寄せた作品集。初読みのエリイ氏が“リトル金原ひとみ”の風合いで興味深かった。全て実話とは思わないが各人がテーマに添った逸話を綴る中、金原ひとみ作品だけは質感がやや異なる。主人公「私」は夫のあらゆる言動が許せなく、また浮気相手の世間や他人への無関心も許せなく、この弛んだ社会が引き起こすそれらの風潮の中で自分がどう在ればよいかで葛藤する。常に毛羽立っているようなその苦悩が痛々しい。それを私小説として送り込んで来た彼女の訴えをどう捉えるべきか、考えさせられた。
2023/03/05
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- 発売日
- 2022-02-18
- ISBN
- 9784866471570