坂東眞砂子

注目の新刊　『隠された刻（とき）Hidden Times』　ダ・ヴィンチ2013年5月号

南太平洋の王国イリアキのツアーコンダクター・美郷のもとに、未来を告げる砂絵「金の汗」の調査に日本のテレビプロデューサーが訪れた。現代、明治、太平洋戦争末期と三つの時代のエピソードが入り混じり、「金の汗」の真実が明かされる壮大な叙事詩ミステリー。

注目の新刊　『朱鳥の陵（あかみどりのみささぎ）』　ダ・ヴィンチ2012年5月号

飛鳥時代。夢を読み解く不思議な能力をもった白妙は、時の太上天皇讃良の心の中へと次第に飲みこまれてゆく――。強大な権力を手中に収め、愛するものを次々と葬っていった日本史上最強の女帝・持統天皇の真実に迫る、重厚でスリリングな歴史小説。

四国＝死国、あの世にいちばん近い場所の恐怖！

個人的に「四国」という土地には良いイメージ・楽しいイメージしか無い。これまで四国を訪問した経験は人生で2度だけなのだけど、とにかく温暖で風光明媚、本州との海道である瀬戸内海はいつも穏やかで、美しい景色に事欠かない。そこらじゅうにやたらうどん屋があり（香川県だけ？）、なおかつそれが美味い。そして、お遍路と呼ばれる八十八霊場の巡礼は徳島出身のプロレスラー・新崎人生のギミックであり、大人気ローカルバラエティ「水曜どうでしょう」の罰ゲームの場。そんな愛すべき土地・四国を舞台にした作品なのに、これほど背筋の凍る思いをするとは露程も思わなかった。

この『死国』は、「四国」を「あの世にいちばん近い場所　死の国＝死国」と設定し、そこから綿密に組み上げらた正統派のホラー。ここに史実や郷土風俗、言い伝えの類が突飛とも思えるすばらしい解釈でブレンドされているため、フィクションだとは解っていても薄ら寒い程強烈なリアリティが迫って来る。改めて考えてみれば、「霊場」と呼ばれる場所が八十八も存在する島。実際に四国に住んでいる方には本当に申し訳無いのだけど、「そんな場所が普通であ…