亡霊が内に宿すのは恨み? それとも……禍々しい気配が横溢する幻想怪奇小説の最高峰『アナベル・リイ』小池真理子インタビュー
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』9月号からの転載になります。
19世紀文学に大きな足跡を遺したエドガー・アラン・ポー。小池さんはポーの「アナベル・リイ」という詩を源泉に、21世紀の新しいゴシック・ロマンスを生んだ。 「中学時代からポーの作品、特に怪奇譚や詩を好んで読んでいました。『アナベル・リイ』だけに特別な思い入れがあったわけでもなかったのですが、ふと『そういえばこんな詩があったな』と思い出して読み返してみた時に、私の中で一斉に物語の情景が拡がってくれたのです」
(取材・文=門賀美央子 写真=菊池陽一郎)
小池さんの多彩な作品群の中で、幻想怪奇ジャンルの小説は初期から重要な位置を占めてきた。 「私の母親は霊を見たり、ちょっとした交信ができたりする人でした。私は子どもの頃から日常会話の中で、死者とのやりとりを聞かされてたんです。母はごぐふつうの主婦で、特別な人間ではなかったんですが、のどかな口調で『ゆうべ、奥の和室に死んだおばあちゃんが来たのよ』なんて話し始めて。そういう環境で育ったせいか、小学校のころから怪奇小説が大好きになり、後に文学書を読…