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夜蜘蛛 (文春文庫 た 85-2)

夜蜘蛛 (文春文庫 た 85-2)

夜蜘蛛 (文春文庫 た 85-2)

作家
田中慎弥
出版社
文藝春秋
発売日
2015-04-10
ISBN
9784167903404
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夜蜘蛛 (文春文庫 た 85-2) / 感想・レビュー

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優希

「父と息子」「戦争の記憶」をテーマに物語は進みます。長い手紙という形で書かれており、会話を一切削除したところに、この骨太のテーマへの文学性を見ることができました。近代からの戦争の一連の空想。いかに戦争を語るかという数奇な物語と言えます。物語や史実が交錯し、曖昧となる記憶は、戦争体験と父親との距離なのかもしれません。暗闇の中の夜蜘蛛は戦争と父親の関係の象徴のように思いました。

2015/10/15

ビイーン

私は父と息子の話には滅法弱い。そう言えば私も子供の頃に夜蜘蛛の話を父から聞かされた。何気ない父の言葉が遠い昔の出来事なのに今言われたかのように思い出される。

2019/08/27

Satoshi

日中戦争を生き延びた父親、やがて介護が必要となり、昭和天皇の死とともに自殺する。遺書に長男の乃木将軍発言について触れたことにより、長男もその後に自殺する。戦争を生き延びた恥と介護を受ける恥。読者を選ぶ作品だ。

2024/01/12

ブルーツ・リー

田中慎弥さんに送られて来た手紙を基に、純文学の作品としたもの。 手紙の文章がそのままだったら、これは文学ではないけれど、いえいえ、その文章、明らかに文学のプロでなければ書く事のできない文体でした。 恐らく、文学とは距離のある一般の方が書いた文章を、意味合いが壊れないように、かつ、純文学作品として仕上がるように、田中慎弥さんが、相当文章を練り直していると思います。 夜の蜘蛛に囚われたのは、田中慎弥さんがおっしゃるように「Aさん」自身だったでしょう。夜蜘蛛に、Aさん自身が囚われてしまった事が残念でなりません。

2019/10/23

スエ

日中戦争の前線で死体の山に隠れ、敵をやり過ごそうとした「父」は、内地から持ってきた妻の写真を奪われる。「息子」はそれに対し、かつて西南戦争で軍旗を奪われ、日露戦争では二○三高地に死体の山を築いた「乃木希典」のようだと伝える。そして時は流れ、昭和から平成へ。父は乃木希典のように、天皇のあとを追って自ら命を絶つ。生き残ってしまった悲しさ、老いていく悲しさ。時に飄々とした表現に煙に巻かれながら、気付けば壮絶な世界にがんじがらめになっていた。書簡体形式は、やはり漱石の「こころ」を意識したのかな?

2024/02/27

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