共喰い (集英社文庫)
共喰い (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
2011年下半期芥川賞受賞作。円城塔の『道化師の蝶』との同時受賞だが、両者の作風は決定的に違う。円城が難解な観念小説風な趣きを持っているのに対して、こちらは新自然主義とでもいうべきもの。表題『共喰い』の意味にも唖然とするばかりだ。よく言えば、ヴァイタルな力に溢れた小説ということになるだろうか。今時には珍しい「血」と「地」の濃厚な小説である。作家の故郷、下関の方言で語られていることも、作品に個性とパワフルな力とを与えている。また、母親の仁子の存在が、作品全体で錘の役割を果たしている点も見逃せない。
2013/07/01
absinthe
性と暴力と言うのは表裏一体なのか。人間の脳の複雑な絡み合いがそうさせるのか。複雑怪奇で神秘的でどうしようもなく下劣な心は誰の心の深層にも、うなぎのように存在する。結局似たもの同志の父子だったのか。川床の町は住民そのものがうなぎであるかのように描かれる。『第三紀・・・』も含めて、魚を使った暗喩が好きな作家さん。釣具や錘やしかけの描写がやたらとなまなましい。性質は親から受け継ぎ、拭い去ったり出来ないのが人間だが、望むことで性質は変えてゆくことも出来るかもしれない。過去は変えられないが未来は変えてゆける。
2019/11/11
パトラッシュ
収録作品の陰の主役は昭和天皇ではないか。『共喰い』の時代設定である昭和63年は天皇の病気が自粛ムードを引き起こしたが、アベ前首相の地元である下関を舞台にしながら一切触れず、政治や天皇など知るかという態度で一貫している。逆に『第三紀層の魚』では、日の丸と勲章に執着しながら長く寝たきりの曾祖父が天皇に相当する(天皇の病気時に報道された下血という言葉を使っているのが傍証)。曾祖父の葬儀で日の丸を一緒に燃やしてしまう祖母は、戦争で死傷した怒れる庶民代表なのだ。これが正しいと断言できないが、深いメタファーを感じる。
2020/12/30
takaC
なるほど共喰いとはそういう意味か。芥川龍之介賞小説にしては分かり易かった。と思う。自分にとっては。
2014/03/19
kaizen@名古屋de朝活読書会
共喰い、第三紀層の魚の2本立て。すばる2011年10月、2010年12月掲載。共喰いで芥川賞。どちらも釣りなどの魚の話題が出てくる。山口県出身。やや暗い。ナツイチ。なぜナツイチに選ばれたかは、瀬戸内寂聴との対談があるためかも。単行本の方が、文庫よりも登録数が多いのは、発行後の年数のためだろう。
2013/10/06
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- 出版社
- 光村図書出版
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- 2023-06-26
- ISBN
- 9784813804383