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君が手にするはずだった黄金について

君が手にするはずだった黄金について

君が手にするはずだった黄金について

作家
小川哲
出版社
新潮社
発売日
2023-10-18
ISBN
9784103553113
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「君が手にするはずだった黄金について」のおすすめレビュー

『地図と拳』で直木賞の小川哲氏新著。主人公の著者自身が、80億の投資詐欺をしていた男と同じ「偽物」だと考えたワケ

『君が手にするはずだった黄金について』(小川哲/新潮社)

『地図と拳』で直木賞と山田風太郎賞を受賞し、『君のクイズ』で本屋大賞にノミネートされた小川哲氏が、自らを主人公に据えて、人々の成功と承認、嘘と真実に迫る小説『君が手にするはずだった黄金について』(新潮社)を書き上げた。

 本書は、著者の小川哲氏自身を主人公にした私小説の体裁をとっている。主人公は冷めた目で、「うじゃうじゃいる種類の人間ではないが探せば自分のかつての同級生にそんな奴がいたかも」という人間たちを眺めるように描いた連作短篇集である。

 大学院生だった主人公(=小川哲氏)が就活のエントリーシートの一問、「あなたの人生を円グラフで表現してください」にぶち当たり、手を止め、熟慮黙考した末に「この問いに答えはなく、そもそも問いが間違っている」という結論に達する話から始まり、小説家になり、やがて山本周五郎賞の最終候補に残ったと電話を受ける話までが描かれる。

この小説は徹底した「リアル」なのか、徹底した「嘘」なのか?

 さて、第一章のエントリーシートで「円グラフ」の質問を出している会社はどこなのかと…

2023/10/20

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2024年本屋大賞受賞作 『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈/新潮社)

『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈/新潮社)

【あらすじ】  同作は、第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞した短編小説「ありがとう西武大津店」を含む宮島未奈のデビュー作だ。

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まとめ記事の目次 ●黄色い家 ●君が手にするはずだった黄金について ●水車小屋のネネ ●スピノザの診察室 ●存在のすべてを ●成瀬は天下を取りにいく ●放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件 ●星を編む ●リカバリー・カバヒコ ●レーエンデ国物語

金とは、生きるとは何かを問いかける『黄色い家』

『黄色い家』(川上未映子/中央公論新社)

 同作は、芥川賞作家・川上未映子が2023年2月に発表したクライム・サスペンス小説。“黄色い家”に集う少女たちの危険な共同生活を描いた作品で、「王様のブランチBOOK大賞2023」や「第75回 読売文学賞(小説賞)」といった数々の賞を総なめにしてきた。

 物語は202…

2024/2/25

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君が手にするはずだった黄金について / 感想・レビュー

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夢追人009

直木賞作家の小川哲さんが独特のこだわりを持つ自身の内面と人間性を徹底的に描いた私小説の6編の連作短編集です。私は著者の作品を読むのは初めてですので手探りではありますが本書は本領のSF小説とは全く違うタイプの重くない軽味のある自由な小説集ですね。本書には安易に妥協しない一度気になったら些細な事にも真剣にのめり込んでいく小川さんの独特な性格が描かれていると思います。まあ恋愛は苦手なようにお見受けしますね。本書の中では、3・4・5の現代社会に生息するインチキな人々の生態を暴いた物語が特に強く心に刺さりましたね。

2023/09/27

starbro

小川 哲、4作目です。王様のブランチBOOKコーナーで紹介されたので読みました。私小説的連作短編集、オススメは、「プロローグ」&「偽物」&「受賞エッセイ」です。 https://www.shinchosha.co.jp/special/ogon/

2023/11/23

まこみや

六つの連作は、小川哲に近似した「僕」を語り手にして、嘗てつきあいのあった知人を対置することで、小説家とはどのような存在か、小説家として生きるとはどういうことかについて問い掛けたものだ。①必要条件である孤独、②捏造された記憶への遡行、③嘘に対して誠実に向き合うこと、④偽者として生きること、⑤自身の虚構性、⑥小説家としての保証と書くことの意味。そうしたテーマの進行のなかで、「僕」が漏らす箴言がとてもクールだ。読み手によって「僕」に対する評価は毀誉褒貶はあるだろうが、私としては作者の小説に対する誠意を感じた。

2023/10/29

Kanonlicht

小川哲本人が体験したこと“風”に書かれた連作短編集。あたかも本当にあったこと?と思わせながらも、「適当な話をでっちあげるのが小説家の仕事」と著者自身が文中で言っている通り、本作の共通テーマは「嘘」だ。ある話では、自分の存在や記憶がいかに不安定であいまいなものかを再認識させられ、また他のエピソードでは、共感できないどころか社会的に断罪されるべき人にも自分に通じる部分があるという視点に、なるほどそうかもしれないと深く考えさせられた。そうすることでしか生きられない人々のもの悲しさまで伝わってくる。

2023/11/03

hiace9000

読書人でこの本を嫌う人は、果たしているだろうか? おそらくいまい、ーそう思う。6編の連作短編は私小説なのか、或いは虚構を介し、それに名を借りた告白的エッセイなのか。"自分語りの面白さ"を強烈に感じさせる作品に出会えたことが何より嬉しい。小川さんという鏡に映る自分を見たり、彼のまわりにいる怪しげな人物たちの中に自分の分身の影を見つけて妙に嫌な汗が出そうになったり…と、孤独を強いる読書時間中、読者は能動的に言葉と格闘し続ける。そうしながら、(本書の一文を拝借すると)"一冊の本と深い部分で接続する"のである。

2023/11/27

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