メタボラ (文春文庫 き 19-23)
メタボラ (文春文庫 き 19-23) / 感想・レビュー
Shun
沖縄の密林で記憶を失い彷徨っていた「僕」は、偶然地元の昭光と出会う。昭光は職業訓練所のような所からの脱走途中で亡霊の様な僕に出会ったという。帰る場所のない二人は沖縄という舞台を放浪し、貧困や格差といった現実を見せつけられていく。実に桐野夏生らしい重いテーマと向き合ったハードな内容だが、宮古島出身だという昭光の底抜けに陽気な気性と方言が一種の癒しとなって効いているように感じます。昭光に比して”僕”の方はより深い闇を抱えていたことが明らかとなって終盤における物語の深度に圧倒させられ、ここに作家の気迫を感じた。
2023/03/19
mayu
暗い森の中で何もわからず足掻く記憶のない僕と独立塾を脱走してきた昭光。二人の青年が出逢い、それぞれ生きるために藻掻いていく。二人の歩む道は常に不安定で直ぐ側に絶望が付いて回る。そして記憶が戻ってきた先にある崩壊。もうやめてあげてくれと目を覆いたくなる。中々のページ数なのに読むのをやめられなかった。一度道を外れてしまったら、どうしたって戻れない出口の無い穴は他人事ではなく、現実に存在するんだろうなと思わせるリアルさがある。搾取され続け、流れ流され地獄を見る。読み終えた後に遥かなる絶望という言葉が浮かんだ。
2023/03/18
さち@毎日に感謝♪
新装版とは知らずに読んでしまいました。記憶喪失の僕と昭光の長い物語でしたが、2人がどこまで行っても社会の底辺で生きていて、読んでいてちょっと辛くなりました。こういう若者が増えないといいと思います。
2023/12/26
水色系
後味が極悪!!超悪!!ツラい。沖縄の若者がテーマとなっているが(正確には、沖縄に暮らす若者)、弱者であるかぎり搾取され続けるというこの社会を取り巻く暗澹とした構図を見たように思った。
2024/01/08
スリカータ
分厚い文庫本。元々は2007年に出版された本だが、家族の崩壊や若者の貧困や雇用問題は16年経った今では更に深刻化しているように思う。ギンジも昭光も根は好青年なのだが、ほんの少しの思考の浅さや選択の拙さで底なし沼に沈んで行く。昭光の話す宮古島の方言が素っ頓狂なお陰で深刻さが緩和されているけど、若い人が生きる事を放棄するような社会、希望が絶望に裏返る社会に、どうして日本はなってしまったのだろうかと考えてしまう。最後まで表題メタボラの意味が分からなかった。表紙のフリーダ・カーロの絵は不気味に内容と似合っていた。
2023/04/06
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- 出版社
- 光村図書出版
- 発売日
- 2023-06-26
- ISBN
- 9784813804383