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真珠とダイヤモンド 下

真珠とダイヤモンド 下

真珠とダイヤモンド 下

作家
桐野夏生
出版社
毎日新聞出版
発売日
2023-02-02
ISBN
9784620108612
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「真珠とダイヤモンド 下」のおすすめレビュー

80年代バブル期、夜中まで営業電話をかけ続けた証券会社の企業戦士たち。桐野夏生が描く成り上がりの物語『真珠とダイヤモンド』

『真珠とダイヤモンド』(桐野夏生/毎日新聞出版)

 1974年生まれの筆者は、バブル経済の恩恵にあずかった記憶がまったくない。1970年生まれの社会学者/詩人・水無田気流も言っていたが、私たちの世代は、バブルのツケを払わされ、その後処理をさせられた。桐野夏生の新刊『真珠とダイヤモンド』(毎日新聞出版)は、そんなバブルの狂騒と絶頂と衰退までを描ききった大作である。

 物語はバブル前夜の86年春、福岡にある中堅の証券会社だ。怒号の飛び交う社内で、朝7時から夜中まで営業の電話をかけまくる「企業戦士」たち。彼らは、実現不可能としか思えないノルマを課せられ東奔西走する。へとへとになって社員寮に帰ると、今度は竹刀を持った寮長のその日の反省をさせられる。睡眠時間は3時間くらい。今ならブラック企業として告発されておかしくない劣悪な環境である。

 こんな時代があったのかと驚く読者もいるだろうが、時代考証はしっかりしており、投資ジャーナリストの中江滋樹氏をモデルとしたらしき人物も登場する。バブル全盛の証券会社の熾烈な争いを通じて、この時代の空気がクリアに伝わるはずだ。

 …

2023/2/28

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真珠とダイヤモンド 下 / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

W-G

バブル期を舞台にしていても、あくまで主題は個々の女性のパーソナルな部分にあり、上巻からずっと感じていた軽さは、そこが肝ではなかったからだと、読み終わって納得。それにしても展開があっさりしすぎている感があって、特にラスト100頁くらいは、かなり駆け足に思えた。とはいえ、終わりよければすべてよしの言葉通り、物悲しさを残しつつ、タイトルに結実していく上手い締め括り方のおかげで、よい読書タイムだったと満足。こういう目線で描かれるバブル時代もアリだなと最後には肯定的な気持ちで本を閉じることが出来た。

2023/05/10

starbro

上下巻、650頁弱完読しました。破綻すると解っていても、スリリングな展開、バブル崩壊、宴の跡、哀しく悲惨な結末でした。タイトルがこんな意味だと思いませんでした。私はバブル末期に社会人になったので、あまり恩恵もなく、今現在も真っ当な人生をおくっていますが、バブル全盛期だったら、本書の主人公達のように破綻していたかもしれません(怖) https://mainichibooks.com/books/novel-critic/post-604.html

2023/03/06

青乃108号

上巻の狂騒と疾走感は下巻に入り一転、地獄絵図を見ているような展開に。正直、上巻を読んでいる時は俺自身も同時代を生きていたため、作品世界に比して当時の、そして今の自分って何てしょうもない、ちんけな生き方をして来たんだろうと大層惨めな気分にもなっていたのだが、この下巻。ここまでとことん突き落とすのか。唯一真面目に堅実に生きてきた水矢子までも。恐ろしい時代だったんだな。大して何にも楽しい事はなかった俺の半生も今生きて何とかやれてるんだからそれはそれで良かったんだろう。皆、大変よね。多分これからも。頑張ろうね。

2024/04/09

まちゃ

バブルの狂騒に踊った望月と佳那の結末は想定通り。堅実な水矢子の半生は想定外でした。出自に恵まれず悲しい結末を迎えた3人の人生に切なさを感じました。人間の欲や業をテーマにした桐野さんらしい作品でした。Kaminさんの表紙の絵を見て、江口寿史のパパリンコグラスが頭に浮かびました。私のバブルの思い出。

2023/03/11

のぶ

下巻に入り、佳那は望月と結婚しバブル全盛に東京本社に栄転が決まり、浦安の東京ディズニーランドが見えるマンションで新婚生活を始める。巻の前半部分は景気も良く、望月も派手に稼ぎ、派手に遊んでいた。やがてバブルの時代が終わり、株価の暴落が始まるとそれまで儲けていた人たちの風向きが変わる。望月も例に漏れず顧客から預かった金の返済に追われるようになる。このあたりノンフィクションを読んでいるような印象を持った。盛者必衰。実際に物語に出てくるような姿を自分も見て来た。当時を懐かしく感じながら大変面白く読んだ。

2023/02/16

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