真空地帯 (岩波文庫)
真空地帯 (岩波文庫) / 感想・レビュー
ベイス
大西巨人が大岡昇平との対談でこの『真空地帯』が軍隊を社会と切り離しすぎていると批判していたが、外泊と隊生活には大いに連続性があってこの批判はあたらないと感じた。大概、テレビなどでの兵士たちの伝え方には悲壮な覚悟や報国の忠、惜別の情などが強調される向きがあるが、この小説で描かれる「内務班」の実態はどうしても野戦に行きたくないという兵士たちの本音と幹部たちの腐敗であって、ああやはりこうなのか、『レイテ戦記』に出てくる遊兵に連なる姿が思い出された。大岡は遊兵に蓋をしたが、むしろ尊ぶべき人間の素であると思う。
2023/08/21
やいっち
長らく、敬して近寄らずできた本。戦後早々に出た反戦の問題作。読まなきゃと思いつつ、何か例えば堀田善衛の『広場の孤独』や大岡昇平の『俘虜記』や『野火』といった本ほどの鋭さを感じない……あくまで先入見である。 とはいっても、いつまでも避けてはいられない作品である。ということで、重い腰を上げた。 読み始めて、やはり、重苦しい…最後まで読み通せるかと思ったが、読んでいくほどに本書が意識の流れの手法を汲みつつも、解説の紅野謙介の話にあるように、ちゃんとしたストーリーがあり、ある種のサスペンス性もある。
2018/11/20
うえうえ
真空地帯というタイトルに興味を持って読み始めた。文章は読みやすいけれど、続きに興味が持てなくて80ページ(全体の6分の1)で挫折。兵士の話なんだけど戦争の緊迫感が感じられないのはなせだろう。余り変化がないのだが後で何かが起こるのだろうか。
2020/03/24
あかつや
かつての戦争についての体験を一括りにして語られたりもするけれど、そこには各人違った体験があるわけで、これもそういう個人的な体験を元に書かれたものだろう。大西巨人がご立腹なのもわかるけど。当時ベストセラーとしてこれが迎えられたのは、世間にまだ軍隊生活の経験者がごまんといて、その人たちの中にに共感する気持ちがあったからで、じゃあ平成も終わろうかっていういま読んでどうかっていうと、見慣れない世界の面白さはあっても、それを越えるほどのものじゃない。悪くはないんだけど『神聖喜劇』に比べると数段落ちるなあという印象。
2019/04/29
Happy Like a Honeybee
内務班制度と初めて知る次第。 閉鎖的な軍隊であるが、現代における組織論にも似た構造を覚える。 戦場だけではなく人間同士が歪み合うことで、火種となり狭い環境の中では死活問題。 日本陸軍の階級制度は出身階級を反映しており、空気が完全に抜かれている。 自由の意味を実感できる一冊だ。
2020/01/02
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- 出版社
- 左右社
- 発売日
- 2017-10-07
- ISBN
- 9784865281774