「終戦日記」を読む (朝日文庫)
「終戦日記」を読む (朝日文庫) / 感想・レビュー
秋 眉雄
中野重治、徳川夢声、山田風太郎、海野十三、高見順、渡辺一夫、木戸幸一、永井荷風、大佛次郎、伊藤整、藤原ていら知識人たちの終戦前後の日記には何が記されていたのか。野坂さんはその時に何処で何をし何を思っていたのか。読み継いでいくしかないです。読んで考え続けるしかないです。
2018/08/11
浅香山三郎
ドナルド・キーン『日本人の戦争』からの流れ。野坂昭如さんが戦争体験を根底に据へた作家だといふことは承知してゐたが、実際の著作を読むのは、纏まつたものでは初めてに近い。敗戦前後の有名無名の人々の日記・手記と、自らの実体験を交錯させ乍ら、日本人の戦争体験を考へていく。指導者や軍の無責任さと無定見さ、一般の人々がまるで天災のやうに戦争被害を捉へてゐる現実、戦後の混乱と価値観の転倒。戦中に中学生だつた著者ならではの、当時の大人たちとは違ふ感情の吐露、肉親の死。戦争を体験した世代が少ない今こそ又読むべき本である。
2017/05/05
こまったまこ
太平洋戦争とその終戦前後の様子を当時14歳だった著者と第一線で活躍していた作家などの視点を通して描き、戦争と日本人について考察する。兵士ではない民間人の日記なので自分にも想像しやすかった。戦後日本の180度思想が変わったとしか思えない米国に対する追従姿勢の謎が少し解けた。内地の人間は戦争は他人事で、米軍による激しい空襲も天災として受け止め米軍を恨んだりしない。今生きるのに精一杯でそれどころじゃない。自分達に手に負えない問題は全て占領軍まかせ。思考を停止させた日本民族を洗脳するのは容易かっただろう。
2015/08/18
TERRY
日本人は戦争を天災として捉えている、という考察が鋭い。なるほど、防ぎようの無い天災を「仕方ないこと」として気持ちの上で損切りして前に進むことは、天災の多い国土に暮らす人々の知恵であり、そのことが戦後の復興の原動力にもなったに違いない。ただ、戦争の本質が人為的なものである以上、反省しないことには同じ悲劇は起こり得るし、そもそも、終わらせることすらできない。この本は現代を生きる日本人への、作者からの遺言なのかもしれない。
2018/12/31
takashi1982
紹介文にもあるように「戦争時、少年だった『火垂るの墓』の著者が、大佛次郎、永井荷風、高見順ら知識人たちの日記から、彼らが東京大空襲、原爆投下、玉音放送などに対してどんな見識を持っていたか」を考えた、同名のNHK人間講座テキストを文庫化したもの。「焼跡闇市派」の面目躍如とでもいうのだろうか。ここぞと言うところで句点を多用する野坂の独特な文体は今回も健在である。テーマも相俟って異常な吸引力と緊張感を持たせていると言うべきか。一度読むとなかなか止めることが難しい。(続く)
2011/07/18
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- 出版社
- 左右社
- 発売日
- 2019-11-01
- ISBN
- 9784865282511