新編作家論 (岩波文庫 緑 39-4)
新編作家論 (岩波文庫 緑 39-4) / 感想・レビュー
shinano
ぼくにとって、「なるほど!」と「好き勝手なことを!」が代わり番こある。勉強と未知の作家や作品への指南的なところがある。キライでないが好きでもない、しかし得るところが多分にあるひとだ。さすが正宗白鳥とやはり思う。白鳥は言い過ぎ感の持論(好き嫌い)とフォロー的客観評価(文学性や芸術性、作家の文章力などに)はちゃんと表している。 漱石鴎外の力はやはり認めてはいるが、小説好きの白鳥には、あれやこれやの不満点があるようだ。小説への芸術性の顕現には人物表現(言動、行動、心理の外的表現と内面裡)に重きをみているようだ。
2019/07/26
壱萬弐仟縁
明治の若き文人は、人生とは、文学とは、と疑いを起して、自から結論を得ることに熱心であった(20-21頁)。高山樗牛は、時代精神の把握、文明批評を作家に警告(62頁)。漱石の作品として、『カーライル博物館』や『倫敦塔』を著者は評価されている(103頁)。人間は気力の衰えた時には、年甲斐もなく、いやに感傷的な言葉を吐きたがるもの(135頁)。人間流転の生涯を、あとから見て意味をつけて、ある意図の下にいろんなことが起こったらしくするのは、藤村氏の持っている作風(206頁)。御嶽山参籠を愛誦とのこと(231頁)。
2013/09/07
しんかい32
すごい読みやすくて面白い。ただ、解説で高橋英夫も述べているように、白鳥は主張を一貫した論旨にまとめないので、なにが書いてあったかを把握するのは案外難しいかも。かしこい人の読書時の思考をリアルタイムで中継されているような感じですね。
2014/11/11
rbyawa
j054、ところどころに出てくる作家のスタイルの予測が漱石、自然主義ら以外に関しては全くお話にならなかったのはまあさて置き。あくまで作品論を連ねたものとしても解釈があっちに行きこっちに行き忙しい、本の中では絶賛していた作家さんなんか他の本では長編の前編しか読んでなかったとも明言されていたので全く油断がならない。あと、全編に渡ってなんとなく誰かしらの影響を受けた形跡があるんだけど…明言されていたのは菊池寛くらいか、大衆作家かもしれない。しかしこの著者さんは自分が好きなものを最上とはしないところは信用できる。
2019/05/22
遠野一義
白鳥を論じてみたかったので読んでみたが、びっくりするくらい面白かった。夏目漱石論が一番興味深く読めたかな。漱石が「愛欲や闘争をニルアドミラリの目で見ていた」の一文を読んで、小林秀雄の『一ツの脳髄』を思い出した。少し意味は異なるが、やはり同時代の人たちは色々シンクロするところがあるのか。
2015/04/19
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- 出版社
- 左右社
- 発売日
- 2019-11-01
- ISBN
- 9784865282511