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棘まで美し (新潮文庫 む 1-9)

棘まで美し (新潮文庫 む 1-9)

棘まで美し (新潮文庫 む 1-9)

作家
武者小路実篤
出版社
新潮社
発売日
1957-09-01
ISBN
9784101057095
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棘まで美し (新潮文庫 む 1-9) / 感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

美少女吉村貞子と、彼女を愛した二人の画家を描く恋愛小説。気難しい芸術家気質の竹谷と、紳士的で万事に鷹揚な山根の対照が面白い。平たく言えば三角関係を描いているのだが、吉村も竹谷も山根も若く純粋で、芸術に打ち込んでいるので、清らかで透明な雰囲気が全編に漂っている。恋愛のもつれで苦しんだ三人が、新たな人生に踏み出す結末は胸を打つ。最後まで読むと作者が「棘まで美し」という詩的なタイトルにこめた人間の存在を肯定する意味に気づいて、この作者の限りない優しさに胸がいっぱいになる。

2016/03/13

さっとる◎

どうしたって傷つくし、傷つけてしまう。好きなだけ。これだって仕事を自分のものにしたいだけ。よろけながらも自らの足ですっくと立ち、隣の芝生を青いと言わず邁進す。そんな人間が在るというそれだけで、世界は美しいと言うに足る。優れた芸術の仕事と同じに、人間の本当にまっすぐい魂の存在を信じさせてくれるひとは、心に幸いをくれる。大好きなのに一緒にいればいるだけ辛くなる恋なんかさっさとやめて、竹谷にしようぜ。彼がついに仕合わせにならないなんて私は信じないし、同じくらいあなたも、仕合わせになってしまって構わないんだから。

2021/11/19

そうたそ

★★★☆☆ しかしまあ、見事なまでにこの人の作品には善人ばかりしか出てこない。性善説とはこういうことを言うのかとつくづく思う。作品の設定としては著者の代表作「友情」に似たようなものを感じる。近い関係にある人物二人が同じ女性に思いを寄せることになるというストーリー。だが「友情」に比べると、こちらの方が内容的にもオーソドックスな青春小説に終始してしまっているので、陰に隠れることとなってしまったのだろう。文豪の名作ゆえ面白かったのだが、なぜ二人がそれほど吉村貞子に恋い焦がれたのか、その理由がよく分からなかった。

2015/06/30

水零

2人の青年画家が愛した美しい、一輪の薔薇。才も富も持つ紳士な青年は、華やかで快活な花を愛でる。花はそれに応えるよう、爛々と咲き誇る。ねぇ、私だけをみて頂戴。咲いてしまった私には、もう貴方の心は無いのでしょう。一人散りゆく女の身体に残ったもの。貴方への深い想い、嫉妬という名の醜い棘。その棘をも愛します。才はあるが貧しく控えめな、青年は構わず女を抱きしめる。誰しもが持つ欠点が、醜い棘までもが貴女だと。馬鹿な人ね、と笑ってください。泣いてください。一生分の恋に燃え、生涯の愛を決めた貴女はきっと誰よりも、美しい。

2019/11/19

冬見

才能ある2人の画家と美しい棘を持った美少女。彼らの恋愛と友情、芸術への愛を描いた抒情小説。これも好きだなあ。武者先生の描く男性はいつも好感が持てる。強情でプライドが高くて、近くにいたら取っ付き辛そう。だけど多分わたしは彼らの、自分の生き方や信じるものに対して素直で誠実なところを、眩しく、羨ましく、そして好ましく感じるのだろうなぁ。吉村と山根に対して途中までもやもやとした複雑な感情を抱いていたが、終盤になってその気持ちも収まっていった。恋愛に対して朴訥な感性を持つ竹谷の、恐れながらこっそり愛する姿が愛しい。

2018/02/12

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