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刻まれない明日

刻まれない明日

刻まれない明日

作家
三崎亜記
出版社
祥伝社
発売日
2009-07-10
ISBN
9784396633226
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刻まれない明日 / 感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

3095人が急に消えてしまった街とつながりのある人々を描いていく連作長編。謎に満ちた街の輪郭が少しずつ明らかになっていく過程は、完成図が分からないジグソーパズルを組み立てるようなスリルがある。この作者はイメージを結晶化するのが巧くて、特に青い蝶がクリスマスのイブの夜にこの街から一斉に飛び立つ場面は、心に忘れがたい印象を残した。どんな人でも自分が失ってしまったものを忘れられなくて、前へ進めないことがあると思う。この物語は、そんな喪失の悲しみを抱えた人の背中をそっと押してくれる優しさに溢れている。

2015/12/27

ミナコ@灯れ松明の火

圧倒的な力によって、なす術もなく消えてしまった町と人々。消滅しなかった「1人」と、消えた人と町に思いを残しながら生き続けなければならないたくさんの人たちの物語。いつも通りの三崎ワールドです。それぞれの愛情、苦悩、新しい明日を刻むために必要なだった葛藤等々がリアルに描かれています。どうしようもない事実を受け入れることのむずかしさ、受け入れて思いを昇華させた人たちの強さ。忘れるのではなく思い出と一緒に新しい明日へ進む彼らに、幸多かれ!と心から祈る。過去作品を読んでいた人にとっては「にやり」な場面も多々。

2011/06/18

nyanco

『失われた町』の10年後の物語だなんて、三崎ファンはワクワク!が、ありえそうもない荒唐無稽な出来事をいかにもありえそうに書いてしまう三崎作品とは何かが違う…。各章に人との出会いが描かれ、甘さと優しさが加わっている。三崎さんが恋愛小説!ビックリしました。読み易く、再生の物語は清々しく『失われた町』を読者と同じく愛する作家の思いが伝わりますが、コアなファンには、やや物足りなさもあり。でも三崎さんがやっぱり好きだ~!

2009/08/06

kariya

かつては確かに在ったのに今は存在しない町。どこにもない図書館分館で続く貸し出しや、届く筈のない古びた葉書は、残された者にとって失った人々を思うよすがともなっていたが、十年を経て状況は変わりつつあった。ありえない世界や職業を不条理でも寓話的でもなく、事実かと錯覚させる不思議な筆致で描き続ける三崎作品は、珍しく恋愛が絡む本作でも”失われた町”を感じ続ける人の心を納得させる。そして生は続く。やがて繋がった道が失われた町の輪郭を消しても、今はもういない、けれど確かにいた誰かを、そっと傍らに伴いながら歩いていく。

2009/10/14

ちはや@灯れ松明の火

君の欠片が散らばった道は光が照らすたび君との思い出が乱反射して、拾い集めようとする指先は血に塗れた。あれから10年、町と道にそっと抱かれた鋭い欠片は小さな丸い粒になってまだ淡い光を放っている。記憶は徐々に薄らいでいつかは消えてしまうけど、君が残した粒を集めて繋いで勲章のように誇ろう。君の指が解けたこの手は違うあたたかな手を握り、並んであの道を歩く。道に眠る想いを感じながら、道に想いを刻みながら。

2009/08/09

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